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脛骨疲労性骨膜炎
すねに沿った筋肉に損傷が生じて痛む状態
脛骨(けいこつ)疲労性骨膜炎とは、すねに沿った筋肉に損傷が生じて痛む状態。シンスプリント(Shin splints)、過労性脛部痛とも呼ばれます。
通常、足のすねの部分に、長期に渡って繰り返し負荷がかかるために起こります。起こりやすいすねの筋肉には2つのグループがあり、すねの前側と外側の筋肉に起こる前外側の脛骨疲労性骨膜炎と、すねの後ろ側と内側の筋肉に起こる後内側の脛骨疲労性骨膜炎とがあります。損傷がどちらの筋肉に生じたかによって、痛みを感じる部位が異なります。
前外側の脛骨疲労性骨膜炎は、すねの前面と外側の筋肉が侵された状態です。このタイプは、張り合う関係にある筋肉の大きさがもともと不均衡であるために起こります。すねの筋肉は足を引き上げ、より強く大きいふくらはぎの筋肉は歩行中やランニング中の着地時に、足を地面まで引き下げる働きをしています。ふくらはぎの筋肉の力が強すぎると、すねの筋肉に損傷が生じることがあります。
主な症状は、すねの前面や外側の痛み。最初はランニング、ウオーキング、陸上競技、スキー、バスケットボール、エアロビクスなどの運動中、かかとが地面に打ちつけられた直後にだけ、不快感や軽い鈍痛が生じます。これは散発的なものであるため、本人が大したものではないと思うことがほとんどです。
さらに運動を続けると、痛みは運動中ずっと持続するようになり、やがて常に痛みがある状態になります。医師を受診するころには、押すと痛む圧痛がすねにみられます。
一方、後内側の脛骨疲労性骨膜炎は、すねの後面と内側の筋肉が侵された状態です。これらの筋肉は、つま先をけり出す前にかかとを持ち上げる役割を果たしています。このタイプは、傾斜のあるトラックや中央が高くなった道路を走ると起こりやすく、足の小指側に体重がかかりすぎたり、このような回転を十分に防げない靴を使用していると悪化の原因となります。
痛みはまず、すねの内側から始まることが多く、足首の関節から約2・5〜20センチ上に痛みが現れます。つま先立ちしたり、足首を内側にひねると痛みが強まります。さらに走ることを続けていると、痛みはすねの前面に広がり、足首の関節内を侵し、上方にも広がって膝の付近にまで及ぶことがあります。
脛骨疲労性骨膜炎の進行とともに痛みは強まり、最初は筋肉の腱(けん)だけが炎症を起こして痛みますが、なお走り続けていると筋肉自体にも炎症が広がることがあります。やがて、炎症を起こした腱が緊張して引っぱる力が生じ、骨との付着部である骨膜からはがれたり、出血やさらなる炎症を起こすことがあります。こうなると、ベッドから起きる時や日常生活の他の動作の最中にも痛みが伴うようになります。
脛骨疲労性骨膜炎を発生する年齢は10歳代から40歳代、特に16〜17歳くらいに多く、女性は男性の約1・5倍の発生頻度です。高校や大学の運動部の新入部員や、合宿などで練習量が増加した部員に多くみられるので、これらの時期には特に注意が必要になります。
脛骨疲労性骨膜炎の検査と診断と治療
整形外科の医師による診断では、症状や問診で脛骨疲労性骨膜炎と確定できますが、疲労骨折や骨腫瘍(しゅよう)との鑑別が必要です。末期ではレントゲン検査で骨膜炎の所見を認め、骨腫瘍、骨肉腫との鑑別が必要なこともあります。
整形外科の医師による治療では、痛みの強い急性期にはランニングなどを休止して局所の安静を図り、アイシングやアイスマッサージを行ったり、消炎鎮痛剤を用います。O脚、偏平足、回内足など下肢や足の形態に起因しているケースでは、足の土踏まずを支える靴の中敷きなどの足底装具を用いて、形態を補正します。
急性期にはランニングなどの休止を徹底しますが、局所の安静期からでも下肢の荷重運動を避け、水泳、エアロバイク、股(こ)関節や足関節、アキレス腱を中心とした下肢のストレッチングを行います。
自発痛や歩行時痛が消失したら、足指でのタオルギャザー、足関節の軽いチューブトレーニングを行います。明らかな圧痛が消失したら、ウオーキングから始め、次に両脚踏み切りジャンプで痛みが出なければ、アスファルトなどの硬い路面を避けて軽いランニングを再開します。ただし、練習量を急激に増やすと、再び痛みが出やすいので注意します。
軽症の脛骨疲労性骨膜炎の場合、完全に運動を休止する必要はないと考えられていますが、練習量と内容の見直しが大切です。ランニング、特にダッシュ系のランニングとジャンプ動作を減らし、練習前のストレッチ、練習後のクールダウンのストレッチと15分くらいの氷冷をすることで、1〜2週間で軽快します。慢性のものは、数カ月かかることもあります。
予防には、下肢の筋力強化とストレッチが重要です。バケツを使った運動、つま先立ちなどでの下肢の筋力強化により、脛骨に加わるストレスを軽減させることができます。ストレッチにより筋肉、腱、腱膜の柔軟性を高めれば、脛骨に対する張力を弱めることができます。
シューズはクッションのよいものを選び、硬い路面の走行をなるべく避けるなどの練習環境の整備も必要です。 脛骨疲労性骨膜炎は土踏まずのアーチ部分が下がってきていることも原因の一つなので、土踏まずを上げるためのテーピングも効果的で、足が過度に回転するのを防ぐことができます。
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