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巨赤芽球性貧血
赤血球を作る際に必要なビタミンB12や葉酸が欠乏するために起こる貧血
巨赤芽球性貧血とは、赤血球を作る際に必要なビタミンB12や、ビタミンB群の一つである葉酸が欠乏するために起こる貧血。悪性貧血とも呼ばれます。
かつては原因が不明で治療法がなかったため、死に至る疾患として恐れられて「悪性」と呼ばれていましたが、多くの医師や研究者が原因や治療法を突き止めようとビタミンや疾患の研究を重ねた結果、今では原因が解明されてビタミンB12や葉酸の注射で治すことができます。
ビタミンB12や葉酸は細胞の核内にあるDNA(デオキシリボ核酸)を合成するのに必要なもので、欠乏すると赤血球の産生の際に細胞の分裂、増殖がうまく進まず、赤血球が途中で死滅します。そして、赤血球に成熟できなかった赤芽球が巨大化した巨赤芽球が、骨髄中にたくさんたまってきます。
赤血球は鉄分を材料にして体内で作られますが、たとえ十分な鉄分を食品から取っても、ビタミンB12や葉酸が不足していると正常な赤血球に成長しません。
ビタミンB12は赤芽球の増殖、正常な赤血球の産生のほか、上皮細胞、胃粘膜、神経細胞の成長にも関係しており、巨赤芽球性貧血になると舌炎や委縮性胃炎、知覚障害も生じてきます。
ビタミンB12の欠乏は、うまく吸収されないことで起こります。ビタミンB12の吸収には、胃に存在する糖蛋白(たんぱく)の一種の内因子が必要で、この内因子自体が欠乏したり、腸内細菌や寄生虫によってビタミンB12が消費され尽くすことで起こります。
また、胃を手術で全部切除した場合は内因子が分泌されないので、手術後3〜7年たってビタミンB12の貯蔵がなくなると、巨赤芽球性貧血と全く同様の症状が起こります。
そのため、赤血球の中に含まれているヘモグロビン(血色素)を作る鉄分をしっかり摂取していても貧血が改善されないという人や、血液検査でヘモグロビンの生産量はあるのに赤血球数が少ないという人は、巨赤芽球性貧血の疑いが考えられます。
食欲不振や消化不良など、鉄欠乏性貧血などほかの貧血でもみられる症状もありますが、巨赤芽球性貧血の特徴としてみられるのは神経性の症状です。舌の炎症や口内炎、手足のしびれや皮膚の感覚まひから始まり、進行すると、手足がまひして動かしにくくなったり、排尿障害も現れます。排尿障害では尿意の感覚が鈍くなるほか、下痢、便秘、吐き気を繰り返しやすくなります。
さらに症状が進行すると、記憶力が低下し認知症になることもあります。巨赤芽球性貧血での記憶障害や知能低下の症状は、早期に適切な治療を行えば回復しやすいのも特徴です。
医師による巨赤芽球性貧血の診断では、まずビタミンB12欠乏か葉酸欠乏かを血液検査で調べ、続いて骨髄を調べて巨赤芽球が認められれば確定されます。
巨赤芽球性貧血の治療法は、基本的に鉄欠乏性貧血と同じで、不足しているビタミンB12か葉酸を補給すれば治ります。ただし、ビタミンB12が不足している場合、いくら大量に摂取したとしても、胃に存在するビタミンB12の吸収を助ける内因子がなければ吸収はされません。内因子が欠乏している発症者には、ビタミンB12の錠剤を投与しても効果はなく、吸収に内因子を必要としない筋肉注射という方法が有効的です。
通常、ビタミンB12を1日当たり500〜1000μg(マイクログラム)注射し、これを1週間続け、以後2〜3カ月に1回投与することで、巨赤芽球性貧血は完全に治ります。委縮性胃炎や胃の全部切除で胃に内因子がない場合は、ビタミンB12の注射を一生続ける必要があります。高齢者で認知症などの症状が重い場合は、回復しないこともあります。
ビタミンB12の含有量が多いのは、魚肉を始め、カキ、アサリ、ホタテガイなどの貝類、牛や豚のレバー、牛肉、卵、牛乳などの動物性食品で、植物性食品にはほとんど含まれていません。ただし、しょうゆ、みそ、納豆などには、微生物によって作られるビタミンB12が含まれています。よほど偏食しない限り、日常の食生活で不足することはありません。
葉酸の含有量が多い食品には、ホウレン草などの緑黄色野菜、果物、レバー、卵黄、胚芽(はいが)、牛乳などが挙げられます。ただし、調理や長期間の保存による酸化によって、葉酸は壊れてしまうため、新鮮な生野菜や果物がよい供給源となります。
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