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血友病

異常出血を起こしやすい遺伝性の疾患

血友病とは、異常出血を起こしやすい遺伝性の疾患。体の血液中あるいは血管外には、出血の際に血が固まるのに必要ないくつかの血液凝固因子が含まれていますが、血友病では生まれ付き、ある種の凝固因子の欠乏あるいは異常のために、血が固まりにくく、出血が止まりにくくなります。

体の中に12種類が存在する血液凝固因子のうち、性染色体であるX染色体上にある第VⅢ因子の欠乏あるいは異常があるものを血友病A、同じく性染色体であるX染色体上にある第ⅠX因子の欠乏あるいは異常があるものを血友病Bといいます。

血友病は伴性劣性遺伝といわれる遺伝の仕方で、その発症の多くは男性でみられます。X染色体が2本ある女性の場合には、もう一方のX染色体に異常がなければ機能が補完されますが、ごくまれに発症がみられます。男性は10万人に6~7人の発症頻度で、血友病Aは血友病Bの約5倍です。基本的には遺伝性の疾患ながら、4分の1の例が今まで家族にみられずに、新しく突然に発生した散発例です。

血友病Aも血友病Bも症状は同じで、深部出血が中心となり、特に関節内や筋肉内で内出血が起こりやすく、一度止血しても翌日~1週間後に再出血を起こすことがあります。ひざ、足、ひじの3関節内の出血が一番多く、溢血班(いっけつはん、青あざ)、鼻出血、歯肉出血などもありますが、内臓出血、頭蓋(とうがい)内出血、腹膜に接したところにある筋肉に血の固まりができる腸腰筋血腫(けっしゅ)などが重要です。頭蓋内出血は致命的なことがあり、腸腰筋血腫は長期に療養をしなければなりません。

新生児期に出血症状がみられることはまれですが、運動量が増えてくる乳児期後半から症状がみられるようになります。歩行ができるようになると、関節内出血、さらに年長になると血尿、筋肉出血がみられるようになります。関節内出血や筋肉出血を繰り返すと、関節の変形や可動域制限が起こります。

幼児期までに大部分が発症しますが、軽症の場合は非血友病の人と変わらない生活を送り、けが、抜歯、手術の時などに血が止まりにくことで、初めて判明することもあります。

血友病の検査と診断と治療

スクリーニング検査では、出血時間、凝固系、線溶系、血小板系、血管系の検査を行い、第VⅢ因子活性または第ⅠX因子活性を測定することにより確定診断されます。

血友病の根本的治療はなく、出血時あるいは予防的に、欠乏している血液凝固因子を静脈注射で補充します。血友病Aには第VⅢ因子製剤が、血友病Bには第ⅠX因子製剤が使われ、補充は欠損因子の活性が20パーセント以上になる程度を目標とします。現在ではこの因子補充療法により、健常者とほぼ同じ生活が可能となっていますし、家庭内自己注射による自己管理も可能です。軽度の出血時の自己注射、あるいは定期的な予防自己注射を在宅で行うものです。

また、人から採血した血液から作る血液製剤のほか、リコンビナント製剤という最新の製剤も、現在では使用されています。製造工程中に一切の人由来、動物由来の蛋白(たんぱく)を使用せず、遺伝子工学的に製造されるのがリコンビナント製剤で、日本では50パーセント以上の発症者に使用されています。

血漿(けっしょう)中に、凝固因子の働きを阻害する物質(インヒビター)が存在する場合は、これを除去する目的で血漿交換療法が用いられます。第VⅢ因子、第ⅠX因子ともに肝臓で生成されますので、生体肝移植により血友病が完治した例も存在します。

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