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ウイルス性いぼ

ヒト乳頭腫ウイルスが皮膚や粘膜に侵入して、いぼができる疾患の総称

ウイルス性いぼとは、ヒト乳頭腫(にゅうとうしゅ)ウイルス(ヒトパピローマウイルス)が皮膚や粘膜に侵入して、いぼができる疾患の総称。いぼの別名は疣贅(ゆうぜい)で、ウイルス性疣贅とも呼ばれます。

ウイルス性いぼは、尋常(じんじょう)性疣贅、青年性扁平(へんぺい)疣贅、尖圭(せんけい)コンジロームなどに分類され、それぞれの原因となる乳頭腫ウイルスの型があります。

ヒト乳頭腫ウイルスは現在までに150種類以上の種類が見付かり、その型によりいろいろな疾患の症状を現すことが知られています。子宮頸(けい)がんやある種の皮膚がんの原因にもなりますが、がんを起こすヒト乳頭腫ウイルスの型は特定のものであって、通常のウイルス性いぼががんに進展するわけではありません。

ウイルス性いぼの中で最も多い尋常性疣贅

尋常性疣贅は、ヒト乳頭腫ウイルスが皮膚に感染して、いぼができる疾患。普通、いぼといわれるものの多くは、この尋常性疣贅です。

外傷を受けやすい露出部、特に手足の甲や指、膝頭(ひざがしら)などによくできますが、爪(つめ)の周囲にもできます。頭部、顔面、頸部、足底にできることもあります。

ささくれなど傷のある皮膚に感染し、数カ月後には光沢のある肌色の直径1ミリ大の半球状に隆起した発疹(ほっしん)ができ、次第に大きくなって、表面が角化して粗く灰白色になります。直径2~10ミリ大になり、融合して2~3センチ大になることもあります。

 頭部、顔面、頸部に生じる場合は、先端がとがった細長い指状、糸状の突起になることがあります。

足の裏に生じる場合は、特に足底(そくてい)疣贅と呼ばれ、通常、米粒大から小豆大の大きさで、足の裏の皮膚面からやや盛り上がり、表面が粗くて白っぽい色をした硬い部分ができます。しばしば多発して集まり、敷石状になります。これをモザイク疣贅と呼ぶこともあります。

足底は体重が掛かって、いぼがめり込んでしまうため、歩く時に不快を感じたり、小石を踏んでいるように痛むことがあります。

足底疣贅は学童期の小児に多く発症し、素足になる学校のプールサイドや脱衣所の床などで接触感染するとみられます。しばしば魚(うお)の目(鶏眼)や、たこ(べんち)と間違われますが、魚の目、たこは靴などによる長期間の摩擦や圧迫が原因で、足底疣贅はウイルス感染症という違いがあります。

ちなみに、子供には魚の目、たこは、まずできません。魚の目、たこは、加重による皮膚の角化で、一種の老化現象として大人にできるものです。

尋常性疣贅を放置しておくと、ほかの部位に移ります。針でほじくったり、市販の薬で取ろうとしたりすると、いぼがほかの部位により広がることになります。素人判断は禁物で、まず皮膚科、皮膚泌尿器科の医師を受診し、適切な治療を受けるべきです。

若い人の主に顔面や手の甲に、扁平に隆起した小さないぼが多発する青年性扁平疣贅

青年性扁平疣贅は、若い人の主に顔面や手の甲に、扁平に隆起した小さないぼが多発する疾患。扁平いぼ、扁平疣贅とも呼ばれます。

青年期の男女にできますが、10歳以下の子供にもできます。中年以上ではほとんどみられません。

ウイルス性いぼの一種であり、主にヒト乳頭腫ウイルス3型と10型の皮膚感染が原因で起こります。同じウイルス性疣贅の一種で、手のひらや足の裏に表面がざらざらした硬いいぼが生じやすい尋常性疣贅とは、ヒト乳頭腫ウイルスの型が違います。

顔面、手の甲、あるいは前腕などに生じるいぼは、2、3ミリから1センチ大で、扁平に多少隆起した円形か楕円(だえん)形をしており、周囲の皮膚と同じ色調または褐色調です。表面は、あまりざらざらしていません。

普通、自覚症状はありませんが、顔面や手の甲を爪や手でかいたり、顔面にかみそりを当てたりすると、ウイルスがかき傷、そり傷に沿って感染するため、直線状にいぼが並んで生じ、増えていくこともあります。

ほかのウイルス性いぼと比べて、青年性扁平疣贅は自然に軽快する可能性が高いと考えられています。特に、突然赤くなって皮がむけ、かゆくなるのは治る前兆で、この炎症の症状が出てから1~2週間ほどで、ウイルスを排除するための免疫機能によって抗体が体の中に作られるとともに、自然消退する性質があります。

しかし、治る前兆の炎症の症状がいつ出るかは人によって異なり、炎症が起きるまでには長期間かかるのが一般的です。

性器に軟らかい、いぼのような腫瘍ができる尖圭コンジローム

尖圭コンジロームは、男女の性器に軟らかい、いぼのような腫瘍(しゅよう)ができる疾患。尖圭コンジローマとも呼ばれます。

性行為感染症の1つとされており、ヒト乳頭腫ウイルスがセックスの時などに感染することで起こります。好発するのは、いわゆる性活動の盛んな年代。

ヒト乳頭腫ウイルスに感染した人がすべてすぐに発症するわけではなく、ウイルスが体内に潜んでいるだけの人がかなりいるといわれています。そのため、移された相手がはっきりしない場合も多くみられます。潜伏期間は一定ではありませんが、一般的に感染後2~3カ月で症状が現れます。

男性では、主として冠状溝という、亀頭と陰茎の中央の間にある溝に、ニワトリのトサカのような腫瘍ができて増殖します。塊が大きくなるとカリフラワー状になることもあります。陰嚢(いんのう)、尿道口、肛門(こうもん)周囲、口腔(こうくう)にできることもあります。

女性では、大小の陰唇、膣(ちつ)、会陰(えいん)部などの皮膚と粘膜の境界にある湿った部分にでき、 尿道口、肛門周囲、口腔にできることもあります。

感染初期は異物感があるだけで自覚症状はほとんどありませんが、かゆみやひりひりする感じがあったり、ほてる、性交痛を感じる場合もあります。

いったん治療して腫瘍が消えても、ヒト乳頭腫ウイルスが皮下に潜んでいて再発を繰り返すことがよくあります。女性では、原因となるヒト乳頭腫ウイルスと子宮頸がんとの関連も推定されています。

男性の場合、正常な陰茎にも1〜2ミリの小さないぼのようなぶつぶつがみられることがありますが、これは治療の必要はありません。しかし、尖圭コンジロームは悪性のものや性行為で移るものまでさまざまなものがありますので、亀頭部にできている痛みのないはれ物に気付いたら、泌尿器科か皮膚科の専門医を受診します。

ウイルス性いぼの検査と診断と治療

尋常性疣贅の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による尋常性疣贅の診断では、いぼの表面を薄く切り取ると点状に出血することで、魚の目、たこと鑑別します。古いいぼでは角質が厚くなって、区別が難しくなります。確実に診断する方法は、いぼを切除して組織学的に診断するか、ウイルス抗原または核酸を検出します。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、いぼを凍結して取る凍結療法や、電気焼灼(しょうしゃく)が一般的に行われます。

凍結療法は、液体窒素を綿棒に含ませて、いぼの凍結、融解を繰り返す方法です。いぼの部分を超低温で瞬間的に凍結させ、部分的にやけどの状態を起こすことで、皮膚内部のいぼの芯(しん)を表面に押し上げ、徐々にいぼを縮小させます。

処置そのものにかなりの痛みを伴うほか、場合によっては水膨れが発生し、処置後も患部に激痛が伴うこともあります。 また、場合によっては水膨れ内部に出血が発生し、黒く変色することもありますが、この状態になると激痛こそあるものの、治りは早くなります。

通常、凍結療法は4~7日が効果のピークであるために、1~2週間に1回の通院で治療しなければならず、効果に個人差こそありますが、およそ数週から2カ月以上と長い日数が必要とされます。治癒率の低いことも欠点で、特に角質の厚い爪の周囲や足底ではなかなか治りません。

なお、家庭用のいぼ治療薬として知られるイボコロリは、角質を溶かすだけなのでかえって広げてしまうことがあります。凍結療法と組み合わせると、よい結果が得られます。

電気焼灼は、レーザーメスや電気メスでいぼを焼く方法です。液体窒素による凍結療法と違って一度で治るものの、麻酔が必須で、傷跡を残すことがあります。凍結療法などと異なり、保険適応外でもあります。

一部の医療機関では、凍結療法で治りにくいケースや痛みに耐えられないケースで、DNCB(2.4-ジニトロクロロベンゼン)という薬を塗布していぼを取る治療法を行っています。DNCBは本来、かぶれの状態を見る検査薬で、これを治療に応用し、いぼをかぶれた状態にして取ります。多少かゆみを伴ったり、じくじくした状態になったりすることがありますが、痛みはありません。塗布を2カ月続けると、約70パーセントが治癒するとされます。

ほかにも、抗生物質のブレオマイシンの局所注射、ウイルス消毒薬の使用、はと麦の種を成分とする漢方薬ヨクイニンの内服、免疫療法などいろいろの治療法があります。

青年性扁平疣贅の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による青年性疣贅の診断では、皮膚症状から視診で判断し、似たような尋常性疣贅やほかの疾患と鑑別します。場合によっては、いぼの一部を採取して組織検査をすることもあります。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、ほかのウイルス性いぼなどの一番基本となる治療法である液体窒素凍結療法の効果が少なく、ある時期になると一斉に自然消退することがあるため、経過をみることもあります。

治りにくい場合には、尋常性疣贅と同様に、いぼを凍結して取る液体窒素凍結療法や電気焼灼、ヨクイニンの内服などが一般的に行われます。

この青年性扁平疣贅では、皮膚を刺激すると、いぼが次々とできてしまいます。爪や手で引っかいたり、顔面ではかみそりを当てたりしないことが必要です。

尖圭コンジロームの検査と診断と治療

泌尿器科、ないし皮膚科の医師による尖圭コンジロームの診断では、梅毒でみられる扁平コンジロームと違って先のとがったいぼで、多発すると鶏冠状を示すため、多くは見た目で判定できます。判断が難しい場合は、皮膚組織の一部を切除して顕微鏡検査で判定します。時には、血液検査で梅毒ではないことを確認することもあります。

泌尿器科、ないし皮膚科の医師の治療では、小さくて少数なら5−FU軟こう、尿素軟こうなどの塗り薬も効果があるといわれていますが、一般的には液体窒素による凍結凝固や、レーザー、電気メスによる焼灼が有効です。大きかったり、多発、再発する場合は、周囲の皮膚を含めて手術で切除します。

これらの治療によって一時的に腫瘍は消えますが、ウイルスは周囲の皮膚に潜んでいるため20〜50パーセントで再発します。

診断が確定したら、きちんと治るまで性行為は控えるか、コンドームを使用するようにします。特に、女性が生理の時はふだんよりさまざまな菌に感染しやすいので、性行為は控えます。また、避妊目的でピルを服用しても、性行為感染症の予防にはなりませんので、男性にコンドームの使用を求めます。

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