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陰茎湾曲症
男性の陰茎が勃起した時に湾曲する状態
陰茎湾曲症とは、男性の陰茎が勃起(ぼっき)した時に根元から、あるいは途中から湾曲する状態。
上下に曲がる場合や左右に曲がる場合、両方が混在した場合などがあり、 陰茎の中ほどから下方向にへの字型に折れ曲がる場合が一番多くみられます。勃起していない時はほとんど目立たない場合が多いのですが、勃起すると明らかな曲がりが確認できます。湾曲が強いと勃起自体に陰茎の痛みが伴うことがあるものの、勃起していない状態では陰茎の痛みはありません。陰茎の湾曲のほか、勃起弱化が起こることもあります。
ほとんどの男性の陰茎はどこかの方向に曲がっているものの、大半は真っすぐといえる範囲に収まっています。陰茎湾曲症でも軽度の湾曲は問題ないものの、陰茎の湾曲が強ければ、パートナーの女性の腟(ちつ)内への挿入は不可能となり性交ができなくなります。
この陰茎湾曲症には、先天性のものと後天性のものがあります。先天性陰茎湾曲症は、生まれ付き尿の出口が陰茎の先より根元側にある尿道下裂に伴って、陰茎が下方向に屈曲するものが多数派で、 尿道下裂に伴わずに左右やまれに上方向に屈曲する陰茎湾曲症も存在します。
陰茎は、主に3つの海綿体で構成されています。陰茎の下側に尿道海綿体があり、中に尿道が通っています。その尿道海綿体の上方に、勃起に関係する2つの陰茎海綿体があります。先天性陰茎湾曲症では、この陰茎海綿体の発育のバランスが取れていないために、勃起した時に湾曲が生じます。
後天性陰茎湾曲症は、陰茎形成性硬化症(ペロニー病)や、外傷による陰茎折症(陰茎折傷)によって生じます。
前者の陰茎形成性硬化症は、陰茎海綿体を包む白膜(はくまく)という結合組織に、線維性のしこり(硬結)ができる疾患で、30~70歳代の男性にみられます。勃起すると陰茎がしこりのある方向に曲がり、疼痛(とうつう)が起こることもあります。曲がり具合にもよりますが、十分な勃起が得られず、性交に支障を来すこともあります。平常時は痛くもかゆくもなく、自然によくなることもありますが、徐々に進行することもあります。詳細な原因は、まだよくわかっていません。
後者の陰茎折症は、事故などによる外傷のために、あるいは勃起した陰茎に過度の力が加わったために、海綿体を包む白膜が断裂して、陰茎が折れ曲がるものです。白膜のみにとどまらず、陰茎海綿体に裂傷が生じたり、尿道海綿体に損傷が生じることもまれにあります。
陰茎湾曲症は勃起した時に陰茎が曲がってしまうため、性行為の際にペニスを挿入しにくかったり、挿入後にすぐに抜けてしまったり、パートナーの女性が痛がったり、男性自身も亀頭部の摩擦が多くて痛みを生じるなどという問題が生じやすくなります。変形によるコンプレックスや、勃起に伴う陰茎の痛みに対する不安など、精神的なストレスから勃起不全(インポテンツ)に陥ることもあります。
陰茎湾曲症の検査と診断と治療
泌尿器科、ないし外科の医師による診断では、先天性陰茎湾曲症の大部分の原因となっている尿道下裂の有無、発症の時期、陰茎知覚異常の有無、勃起硬度の程度などを問診します。さらに、陰茎にしこりがあるかどうか触診します。しこりがあれば、陰茎形成性硬化症(ペロニー病)も疑います。
陰茎形成性硬化症の診断では、以前に打撲などによる外傷や炎症があったかどうかが、参考になります。超音波検査やMRI検査を行うと、しこりの厚さや大きさを観察でき、しばしば石灰化が確認できます。陰茎知覚異常がある場合には、振動覚測定を行います。
この陰茎形成性硬化症ががんになることはありませんが、しこりや痛みが同じように現れる陰茎がんとの見極めは難しく、正確に診断するためにしこりの一部を切除して組織検査を行うこともあります。
先天性陰茎湾曲症に対する治療では、性交渉に障害が出るような場合やその可能性が高い場合、性交経験がなくても湾曲が強く将来的に性交渉に障害が出る可能性が高い場合、本人が希望すれば手術を行います。手術を行った場合、尿道海綿体を周囲組織から剥離(はくり)するだけで整復できることもありますが、 ほとんどは湾曲した形状の原因となっている陰茎白膜を切除します。方法としては、曲がる方向の反対側の白膜を切除して縫い縮める縫縮法(プリケーション法)で、勃起した時に真っすぐになるように矯正します。
手術では、確実に湾曲を治すことができます。しかし、長いほうの白膜を切除することにより治すため、結果的に陰茎の短縮を伴いますので、移植手術などで陰茎海綿体や尿道の延長を行うこともあります。1時間30分ぐらいの手術で、3日間程度のの入院が必要です。
近年は、治療ができない場合、いくつかの手術も行われます。真皮(脂肪)移植や、陰茎海綿体の中に支柱材を埋め込むプロステーシス手術です。
陰茎形成性硬化症に対しては特に有効な根本的な治療法はありませんが、勃起障害の原因となったり、痛みが起こる場合には、超音波治療(体外衝撃波治療)、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の局所注射ないし内服、コラーゲン分解酵素の局所注射、ビタミンEの内服、ヘパリン類似物質や非ステロイド系消炎鎮痛薬の軟こうの塗布などが試みられますが、あまり有効ではないようです。痛みが起こる場合には、放射線照射が有効とされています。
性交渉に障害が出るような場合、本人が希望すれば手術を行うこともあります。手術には、しこりがある反対側の白膜を切り詰めて湾曲を矯正する縫縮法(プリケーション法)と、白膜のしこり自体を切除し、欠損部に皮膚や静脈を移植する移植法の2つがあります。
通常、軽い場合は縫縮法、症状が進んでいれば移植法が行われます。縫縮法は湾曲の改善のみを目的とした方法で、移植法に比べて簡単ですが、しこりや痛みの改善はできないことと陰茎の短縮が問題となります。移植法も、手術後の瘢痕(はんこん)組織が硬化して手術前より悪化したり、切除しても再発することがあるのが問題となります。
いずれも2時間ぐらいの手術で、3日間程度のの入院が必要です。糖尿病のある人の場合は、血糖コントロールが必要のため入院期間が少し長くなります。縫縮法を局所麻酔で行う場合は、日帰り手術も可能です。
症状が進んで陰茎海綿体にまで影響するなど重い勃起障害がある場合は、陰茎海綿体の中に支柱材を埋め込むプロステーシス手術も検討されます。
陰茎折症(陰茎折傷)後の湾曲に対する治療では、多くは手術的治療が行われます。
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