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インフルエンザ脳症
インフルエンザによって起こる免疫異常で、脳が障害される疾患
インフルエンザ脳症とは、インフルエンザウイルス感染に伴う発熱後、急速に脳の障害を起こす疾患。インフルエンザ関連脳症とも呼ばれます。
主に5歳以下の乳幼児に発症します。ただし、2009年〜2010年に流行した以前の新型インフルエンザでは、5〜9歳の発症が多くみられました。
インフルエンザウイルス感染に伴う発熱後、数時間から48時間以内にインフルエンザ脳症は起こりますが、インフルエンザウイルスそのものが脳に入り込むわけではなく、インフルエンザウイルスに対抗しようとした体内の免疫がオーバーワークし、神経細胞など脳の組織を破壊してしまうのが原因です。
インフルエンザ脳症は重い疾患ながら死亡率は年々下がっており、1998~1999年では31パーセントだったものが、ガイドラインができて2001~2002年で17パーセントに減少。さらに、2005~2006年では9・8パーセントまで減少しました。しかし、15パーセントには、てんかんや発達障害などの後遺症が残ることもあり、まだまだ怖い疾患であることには変わりません。
インフルエンザ自体の予防と、脳症になった場合の初期治療が大切で、適切な治療で約70パーセントは問題なく回復します。
インフルエンザ脳症の症状としては、インフルエンザ特有のさまざまな症状と脳の障害を起こします。多くは38度以上の高熱、せき、鼻水、全身倦怠(けんたい)感、のどの痛み、筋肉痛などのインフルエンザの症状に続いて、けいれんや、意識がなくなる意識障害、おびえ、恐怖、幻覚、幻視、突然大声を出したり、うわ言をいったり、突然怒り出したりする異常行動をみせます。
症状が進行すると、腎(じん)障害による血尿、胃腸障害による下痢、肝機能障害、凝固障害による出血傾向など、全身の多くの臓器の障害が出てきます。
保護者は通常のインフルエンザでは見られない症状がないか注意する必要がありますが、異常行動が必ずしも脳症が起きている証拠とは限りません。
インフルエンザ感染症の治療薬であるタミフル投与後の異常行動の報告で、インフルエンザ治療時の異常行動が問題になりました。異常行動の多くは、発熱後24時間以内に見られ、特に高熱時に多いようです。一方で、タミフルを投与していない無治療のインフルエンザでも異常行動が見られることがあるため、異常行動自体がインフルエンザによる合併症とも考えられています。いずれにしても、異常行動によって事故につながることもあるので、インフルエンザの時には注意深く観察する必要があります。
インフルエンザウイルスにはA型、B型、C型があり、ヒトに感染しやすいのはA型、B型。A型はウイルスの表面にある小さな粒子によって、さらにAソ連型、2009年に行した豚由来のH1N1型、A香港型(H3N2型)に分かれます。今は見られませんが、アジア風邪の原因であるH2N2が流行した時代もありました。
どの型のインフルエンザでもインフルエンザ脳症が起こる可能性はありますが、A型に多いといわれています。B型も何年かに1度は流行しています。
インフルエンザ脳症の検査と診断と治療
小児科、ないし内科の医師による診断は、まずインフルエンザにかかっていることが確定診断できていなくてはなりません。インフルエンザの診断の多くは、症状を中心に迅速検査で行われます。多くの場合は鼻の粘膜を綿棒で採取して、キットに入れて反応を見て、15分もあれば診断ができます。また、鼻水を検査するキットもあります。
インフルエンザウイルスの遺伝子を機械で増やして判断するPCR検査、インフルエンザに対する抗体が上がっているかどうかをみる血液検査などもありますが、実際は、ほとんどが迅速検査で分かります。ただし、発熱から検査までの時間が短いと、インフルエンザであっても陽性にならない可能性があるので、12時間から24時間後に、再検査を必要とする場合があります。
A型の中で、ソ連型と香港型を区別するキットもありますが、まだ普及していません。2009年〜2010年に流行した豚由来のインフルエンザの診断には、少し時間がかかるPCR検査を行います。
上記の検査でインフルエンザと確定した上で意識障害がある場合、インフルエンザ脳症を疑います。続けて、脳波検査、頭部CT検査、頭部MRI検査、血液検査、尿検査を行います。
医師による治療では、まず全身状態を改善すること、特に酸素投与や、脱水、ショック状態の改善、循環動態の管理などをしっかり行います。 次に、けいれんを起こしている子供が多いので、これをしっかり止めます。これらの段階で、必要ならば人工呼吸管理をします。
インフルエンザ脳症の治療としては、抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザなど)、免疫の異常を抑えるステロイドパルス療法(ステロイド大量療法)、同じく免疫の異常を抑えるガンマグロブリン大量療法などを行い、必要なら34度前後の脳低温療法、脳圧を下げる治療、血液浄化療法(交換輸血)などを選択します。
このように、インフルエンザ脳症の場合は、全身管理をした上で、全身の治療が必要になります。オーバーワークして脳を攻撃してしまう免疫自体を抑制する治療なので、その間に他のウイルスに攻撃されないよう、感染症の管理も必要になります。
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