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炎症性角化症(乾癬)
慢性の経過をとり、なかなか治りにくい皮膚疾患
炎症性角化(かくか)症とは、皮膚が赤みを帯びる炎症と、皮膚の表皮や角質層が厚くなる角化症が同時に起こる皮膚疾患。乾癬(かんせん)、扁平苔癬(へんぺいたいせん)、毛孔性紅色粃糠疹(もうこうせいこうしょくひこうしん)などが含まれる。
炎症性角化症の代表である乾癬は、皮膚が赤くなって盛り上がり、表面に厚い銀白色の鱗屑(りんせつ)がついて、その一部がポロポロとはがれ落ちる皮膚疾患。慢性の経過をとり、なかなか治りにくい疾患ですが、周りの人に移ることはありません。
日本では3〜16万人の発症者がいると推定され、近年は増加傾向にあります。男女比は2対1で男性に多く、主に30〜40歳代に発症します。女性では、10歳代と50歳代の発症が多いといわれています。
乾癬の起こる原因は、いまだはっきりとしていません。一説によると、一種の免疫反応の異常により生じるとされます。すなわち、健常な皮膚では、表皮細胞と白血球(リンパ球など)がサイトカインなどの伝達物質を使って、うまく連絡を取り合ってお互いを制御していますが、このバランスが崩れると表皮細胞が一方的に増殖して、早く脱落していくことが起こります。
健常な皮膚では普通、表皮細胞はその一番外側に角質層という死んだ細胞の層を作り、垢(あか)になって落ちていくことを、一定の周期の45日で繰り返しています。乾癬では、この周期が4~5日と極度に短縮しているため、カサカサした薄皮である鱗屑がどんどんできては、ポロポロとはがれていきます。
この免疫反応の異常は、遺伝的になりやすい体質がある人に、扁桃腺(へんとうせん)炎などの感染症、薬物や外傷などの外的因子、糖尿病や高血圧、肝臓病、ストレスなどの内的因子が複雑に絡み合って発症したり、悪化したりすると考えられています。第二次世界大戦後に増加した疾患であり、もともと欧米人に多いことから、食事の西洋化が関係しているのではと類推されています。
一つひとつの発疹は、にきびのような赤いぶつぶつで始まり、次第に周囲に拡大するとともに厚い鱗屑を持つようになり、ある時を境によくなって、鱗屑がなくなるということを繰り返します。その時の鱗屑の大きさは、一定していません。このように、よくなったり悪くなったりを年余に渡って繰り返します。
乾癬では、ケブネル現象といって、繰り返しこすったり、傷付いたりした個所に、数日してから新しい発疹が出てくることがあります。これは、体の中でよくこすれる部位である肘(ひじ)や膝(ひざ)、尻(しり)、頭の毛の生え際などから発疹が出てきたり、あるいは発疹がひどい傾向にあります。
また、アウスピッツ血露現象といって、鱗屑を無理にはがすと、点状に出血がみられることがあります。これは、乾癬の特徴的な表皮の増殖の仕方と関係しています。すなわち、表皮が厚くなった部分と薄くなった部分が隣り合っているため、薄い表皮の下にある血管が傷付いて生じると考えられます。
鱗屑が厚い時にかゆみがありますが、基本的には自覚症状もなく、内臓にまで疾患が及ぶことはありません。爪(つめ)が白く厚ぼったくなり、爪水虫と間違われる場合もあります。
こういった乾癬の典型的症状のみがみられる例を、尋常性乾癬といいます。乾癬の中の特殊な病型として、発疹が全身に広がり真っ赤になる乾癬性紅皮症、赤みの上に小さな膿(うみ)が多発する膿疱(のうほう)性乾癬、リウマチのような関節症状を伴う関節症性乾癬があり、これらは何かの切っ掛けで急に悪化する重症型の乾癬といえます。別の特殊型に、滴状乾癬があります。これは、子供から若い人に多く、風邪のような症状に引き続いて、全身に小型の発疹が一度に多発します。
炎症性角化症(乾癬)の検査と診断と治療
乾癬の症状に気付いたら、近くの皮膚科専門医のいる医療機関を受診し、治療法を相談します。多くのケースでは外来通院治療が行われ、重症型の場合には入院治療が必要なこともあります。
皮膚科の医師による診断は、特徴的な発疹とその分布、経過より判断します。通常は内臓の異常はありませんが、時に糖尿病、高血圧、肝臓病を合併していることがあるので、検査で確認することが必要です。また、薬の副作用で乾癬のような発疹が出てくることもあります。治療の効果がみられない場合や経過の長い場合は、発疹の一部を切って顕微鏡で調べる組織検査を行うと、診断が確定します。
まだ根本的な治療法はなく、症状に合わせたいろいろな治療が行われます。いずれの治療法も治療を中止すると、再発することがあります。また、必ずしも強力な治療法を行うことが最善とは限りません。そこで、乾癬のタイプなど医学的要因、年齢など発症者の要因などをもとに、治療による効果と危険性を考え、医師と発症者とで検討をして治療方針を決めます。
症状に合わせた治療の方法には、外用薬、内服薬、光線療法などさまざまあります。症状が軽い場合には主に外用薬で、症状が重くなると内服薬や光線療法で治療します。
外用薬には、副腎皮質(ふくじんひしつ)ステロイド薬が多く用いられています。そのほか、活性型ビタミンD3外用薬も副腎皮質ステロイド薬ほどの速効性はありませんが、副作用が軽微なので併せて使用します。古くから用いられてきた外用薬にタールやアンスラリンなどがありますが、現在は一部の病院でしか使用されていません。
内服薬としては、ビタミンA類似物質であるエトレチナート(チガソン)や、免疫抑制薬であるシクロスポリン(ネオーラル)が用いられ、一定の効果が得られています。
エトレチナート(チガソン)は、表皮細胞がどんどん増殖していくことを抑制する薬で、特に膿疱性乾癬の場合には最も効果があります。問題は副作用で、妊娠中に内服すると奇形児が産まれる可能性が高まります。薬をやめてからも、女性は2年、男性は半年間避妊の必要もあります。長期間に渡って内服した場合には、骨への影響が出ることがあり、口唇がカサカサと荒れることもあります。
シクロスポリン(ネオーラル)は、最も即効性があります。副作用として腎障害、高血圧があり、薬の血中濃度と併せて定期的チェックを行い、薬の量を調整します。胎児への安全性は確立されていないので、妊娠中は内服を行いません。
光線療法は、紫外線の増感剤であるメトキサレン(オクソラレン)を発疹部に塗り、長波長紫外線UVAを当てる治療で、PUVA(プーバ)療法といいます。乾癬が全身にある場合、入院して内服のメトキサレンを使用してPUVA療法を行う場合もあります。紫外線を当てることで、異常な免疫反応が抑制され、効果が得られると考えられています。
ただし、皮膚への障害が少ないUVAとはいっても、長期間に渡る場合は将来の発がんの危険性を高める可能性もありますので、照射する総量を一定量以下にしておく配慮が必要とされます。妊娠中は、胎児への影響がわかっていないので行いません。近年、PUVA療法に代わる光線療法として、特定の紫外線波長を利用したナローバンドUVB療法も利用されるようになってきています。
いずれの治療法も一長一短があるため、治療により得られる効果と副作用のリスクの兼ね合いを考え、うまく組み合わせて症状をコントロールすることが大切です。乾癬の多くは慢性に経過しますが、自然に軽快、治癒することもあります。滴状乾癬は、副腎皮質ステロイド薬の外用と抗生物質の内服で軽快し、他の病型と異なり多くは一過性です。
生活上の注意としては、こすると新しい発疹が出てくるケブネル現象がありますので、皮膚をこすり過ぎないように注意します。入浴は構いませんが、こすり過ぎず、また鱗屑を無理にはぎ取らないようにします。ただし、鱗屑には発疹の慢性化に関係する物質も含まれていますので、ぬるま湯につかって軟らかく後で無理なく鱗屑を取ることはよいことです。
日光浴も効果があるので、適度に行います。急激に日焼けをするとやはりケブネル現象で悪化することもあるので、あくまでも適度に。風邪を引いたりした後など、感染によりサイトカインのバランスが崩れ、乾癬の症状が悪化することがあります。風邪を引かないように、まめにうがいを励行します。精神的な動揺やストレスが疾患を悪くしますので、短気を起こさず、気長に治療していきます。
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