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大田原症候群
新生児期から乳児早期に発症する難治性のてんかん
大田原症候群とは、新生児期から生後3カ月以前の乳児早期に発症する難治性のてんかん。早期乳児てんかん性脳症とも、EIEE(early infantile epileptic encephalopathy with suppression burst)とも呼ばれます。
生後4カ月から1歳ころに発症するウエスト症候群(点頭てんかん)、2歳~8歳に発症するレノックスガストー症候群とともに、年齢依存性てんかん性脳症に分類されます。それぞれのてんかんの好発年齢が乳幼児期にみられること、大田原症候群からウエスト症候群へ、さらにウエスト症候群からレノックスガストー症候群へと年齢とともに移行することが多いため、脳の発達過程とこれらのてんかんの発症が密接に関連しているものと考えられています。
てんかんは、脳の神経細胞の伝達システムに一時的な機能異常が発生して、反復性の発作が起こる疾患です。発作時には意識障害がみられるのが普通ですが、動作の異常、けいれんなどだけの場合もあります。こうした異常な症状が長期間に渡って何度も繰り返し現れるのが、てんかんの特徴です。
大田原症候群の発症者は、10万人に1人以下とみられています。発症すると、強直発作を頻発します。強直発作は全身を強直させて、頭部を前屈し、両上肢を挙上させ、眼球が上転する数秒~30秒程度の発作で、発作の発見時には多くの場合、一過性に呼吸を止めて、唇や爪(つめ)が青紫色になるチアノーゼが見られます。覚醒(かくせい)時にも睡眠にも、発作は出現します。
脳波を調べると、覚醒時、睡眠時を問わず持続的に、サプレッションバーストという特徴的な脳波が認められます。サプレッションバーストは、振幅の小さい波の時(サプレッション)と、振幅の大きい波の時(バースト)とが交互に現れるものです。発作を起こしている時の脳波は、ほとんどが全般性脱同期を示します。
強直発作に伴って脳の働きが弱まり、知的障害や運動障害などを来します。
大田原症候群は、脳の低酸素や感染症、事故などよる脳損傷によっても生じますが、一部は脳で働くARX、およびSTXBP1という遺伝子の配列の異常によって生じます。ARXという遺伝子は、ガンマアミノ酪酸(GABA、 ギャバ)と呼ばれる脳の興奮を抑える物質を含む神経細胞の発生に関係しています。
小児科、あるいは神経内科の医師による治療では、抗てんかん薬の内服のほか、ビタミンB6の内服、副腎(ふくじん)皮質刺激ホルモン(ACTH)療法、甲状腺(こうじょうせん)刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)の注射などが行われます。
しかしながら、大田原症候群の発作は難治で、多くは抗てんかん剤および副腎皮質刺激ホルモンに反応しません。薬剤が部分的に有効で発作が消退しても、重症の心身障害を残し予後は極めて不良で、早期死亡の例も少なくありません。
脳の前頭葉に焦点性皮質形成異常のある大田原症候群の場合には、外科治療が精神運動発達と発作コントロールの両方に有益な効果があります。
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