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漏斗胸

胸板が陥没し、あたかも漏斗のような外観を示す胸郭の変形

漏斗胸(ろうときょう)とは、胸板が陥没し、あたかも漏斗のような外観を示す胸郭の変形。先天的に変形を認めるもので、小児期に発症します。

脊椎(せきつい)から左右に12本の肋骨(ろっこつ)が出ていますが、この肋骨は前の方で肋軟骨となり、前胸部の中心にある胸骨につながっています。この胸骨が陥没しているのが漏斗胸ですが、先天的に肋軟骨が後方に過剰発育するのが原因と考えられています。それゆえ、幼児期にはそれほど目立たなかったものが、成長とともに陥没がひどくなることがあります。

数百人に1人の頻度で発生し、男女比は4対1で男子に多いとされています。女性は胸の膨らみで隠せるため、実際にはそれほど差はないと見なされています。

遺伝が関係している場合もあり、マルファン症候群、くる病、骨形成不全症などさまざまな疾患の一症状として出現することがありますが、その一方で全く遺伝的関係のない場合もあります。

また、まれではありますが、鳩胸(はとむね)と呼ばれ、胸板が前方に突出し、あたかも鳩の前胸部を思わせるような胸郭の変形と、漏斗胸による胸郭の変形を併発する場合もあります。例えば、右側の胸板が鳩胸で、左側の胸板が漏斗胸のような状態を示します。

外観上の胸の変形が主だったものであり、一般的には無症状です。しかし、高度な漏斗胸においては、心臓や肺が圧迫されて肺活量が減ったり、風邪、気管支炎、喘息(ぜんそく)などの呼吸器障害を起こしやすかったり、運動時に心臓の圧迫による循環障害を起こす場合があります。

また、扁桃腺(へんとうせん)のはれと漏斗胸が合併することがあり、扁桃腺による呼吸器症状が漏斗胸の陥没を増す可能性があります。この場合、扁桃腺を治療すると陥没が改善するケースもあります。

高度な漏斗胸においては、治療の重要性が改めて評価されつつあります。身体的症状よりも、むしろ美容上の著しい変形を気にすることによる精神的苦悩のほうが問題になり、プールに入るようになると悩む小児もいますので、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、美容外科の医師を受診することが勧められます。

漏斗胸の検査と診断と治療

小児科、小児外科、整形外科、形成外科、美容外科の医師による診断は、その特異な胸郭の変形から容易ですが、胸骨の状態、心臓、肺への影響を調べるためにX線検査、CT検査、MRI検査、心電図検査などを行うことがあります。

小児科、小児外科などの医師による治療は、新生児、乳児期の漏斗胸の場合、胸の変形は時に自然治癒することがあるとされているため、ほとんどは経過観察します。

3、4歳以降になると自然治癒は期待できず、変形を矯正するためには手術を行うことになります。軽度の漏斗胸では、扁桃腺の治療や、水泳などの運動、筋肉トレーニングで胸筋を鍛え上げるとカバーできる可能性がありますが、補助的な役割であり、胸の陥没そのものが治ることはありません。

手術をするかしないかは、身体的障害の程度、機能的障害の程度、変形の程度、精神的障害の程度などを総合的に判断して、主治医、発症者本人、家族と相談の上、決定することになります。手術の時期は、骨が軟らかい小学校低学年前後が最適とされています。

漏斗胸の手術法としては、変形した部分の胸骨を引っくり返す胸骨翻転(ほんてん)術や、肋軟骨を切除して胸骨を上に持ち上げる胸骨挙上(きょじょう)法があります。胸骨挙上法には、骨と軟骨に骨切りを加えて持ち上げる方法と、金属プレートによって骨切りをすることなく胸骨を持ち上げる方法の2種類があります。いずれの方法も利点と欠点がありますが、最近では後者が一般的に行われるようになってきました。

後者は開発したアメリカの医師にちなんでナス法と呼ばれ、胸の両わきを小さく切開し、そこから金属製の弓形のバーを陥没している胸骨の裏側に入れ、裏側から前方へと胸骨を押し出して矯正し、子供で約2年、成人で約3年程度胸骨をよい位置で固定し、再手術でバーを抜き取る方法です。手術時間も短縮でき、胸に残る傷跡が小さいので、漏斗胸の手術の標準的なものになってきています。

ナス法による手術は、公的医療保険が使え、入院は10日前後で、再手術のための入院は3、4日ほど。手術後は3カ月ほどの運動制限が必要で、金属製のバーが入っている間は空手などのコンタクトスポーツはできません。

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