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老人性難聴
加齢に伴って進行する難聴で、両耳で大きな違いなく進行
老人性難聴とは、加齢に伴って進行する難聴。生理的現象の一つとして起こってくる聴力の低下であり、生理的老人性難聴とも呼ばれます。
人間の聴力は20歳くらいが最も鋭敏であり、その後は次第に低下し、20歳代から30歳代で聴力の老化が始まるといわれています。耳の聞こえが悪くなってきたと自覚するのは50歳くらいで、それまでは聴力の低下を気付くことなく過ごしています。これを無自覚性の難聴といいます。
通常、50歳を超えると聴力が急激に低下し、60歳以上になると日常会話の面で不便になり始めます。しかし、老人性難聴の進行状況は個人差が大きいので、40歳代で聞き取りを補助する補聴器が必要になる人もいれば、80歳代を超えてもほとんど聴力が低下しない人もいます。
若いころから日常的に大きな音で音楽を聞き続けていたり、大きな騒音を日常的に感じていると、早く老人性難聴になってしまいがちといわれています。
老人性難聴による聴力の低下は、4000ヘルツを中心とした高音域から発生し、徐々に500〜2000ヘルツの会話音域、100ヘルツ以下の低音域へと広がっていきます。従って、早期には難聴の自覚がなく、耳鳴りだけを感じる場合があります。高音域ほど聞き取りにくいため、電話のベルや、ドアのチャイムが聞こえにくくなります。
会話音域の聞こえが悪くなり、日常会話に支障が出るようになって、初めて難聴に気付きます。ただ単に日常会話が聞き取りにくくなるだけでなく、会話は聞こえても何をいっているかがわからず、聞き間違いや聞き返しが多いなどという状態が、しばしばみられます。これは言葉を聞き取る能力である語音弁別能の低下のために生じ、老人性難聴の特徴です。
一方の耳だけではなく、両側の耳で大きな違いがなく進行していくのが、一般的です。男性は女性よりも、難聴の程度が高くなる傾向があります。
加齢に伴い、内耳の蝸牛(かぎゅう)にあって音を感じ取る有毛細胞という感覚細胞が委縮したり、数が減少したり、内耳から脳へと音を伝える神経経路や中枢神経系に障害が現れたり、内耳の蝸牛の血管の障害が起こったり、内耳内での音の伝達が悪くなったりします。これらの原因が一つまたは複数組み合わされて、音が聞こえにくくなり、言葉を聞き取る能力も悪くなる老人性難聴が発生すると考えられています。
体質も関係し、内耳の血流が悪くなるような動脈硬化、腎臓(じんぞう)病、糖尿病といった慢性の疾患は、老人性難聴を進行させる可能性があります。
加齢に伴って聴力が低下したと自覚したら、早い段階で耳鼻咽喉(いんこう)科を受診することが勧められます。難聴になると周囲の情報が耳から入ってくることが少なくなる結果として、脳まで老化させてしまう危険性もあります。あまりにも聞き取りづらいようなら、生活環境なども考えて自身に合った補聴器の装着を考えなくてはなりません。
なお、難聴の程度に応じて身体障害者福祉法による補償、例えば補聴器の購入費補助が行われています。申請書類の記入は、耳鼻咽喉科で行われています。
老人性難聴の検査と診断と治療
耳鼻咽喉科の医師による診断では、鼓膜の診察と純音聴力検査、語音明瞭度検査を行い、生活環境を考慮して補聴器を必要とするかどうかを判断します。聴力検査では、高音域が聞こえにくくなることから始まる感音難聴を示し、進行すると中低音域の聴力も低下します。
難聴の度合は一般的に、500〜2000ヘルツの会話音域の聴力低下に応じて、平均聴力レベルが20デシベルまでを、ささやき声もよく聞こえる正常聴力として、40デシベルまでを、小声が聞きにくい軽度難聴、70デシベルまでを、普通の声が聞きにくい中度難聴、70デシベル以上を、大きな声でも聞きにくい高度難聴、90デシベル以上を、耳元での大きな声でも聞こえない重度難聴、100デシベル以上を、通常の音は聞こえない聾(ろう)に分けます。
耳鼻咽喉科の医師による治療では、聴力をよくする決め手となる治療法はありません。コミュニケーション障害への対策として、補聴器の装用が勧められますが、本人に難聴の自覚があまりなく、使用されないことも多いようです。
補聴器は、ポケットに本体を入れる箱形、耳たぶにかける耳掛け型、耳の穴に入れてほとんど外からはわからない耳穴型などがあります。使用時にピーピーという音が発生するハウリングが起こることがなく、自分で簡単に操作できるものが勧められます。ハウリング予防のためには、個人の耳の形に合わせたイヤーモールドと呼ばれる耳栓を作るのが有効です。
残念ながら、補聴器を使用したとしても完全に元通りの聴力が戻ってくるとは限らず、依然として聞き取りづらい状態が続くこともあります。補聴器を有効に使用するためには、ある程度の聴覚訓練が必要です。
老化を防ぐために、日常の健康管理と精神安定に気を付けることはいうまでもありませんが、耳に悪影響を与える騒音や薬剤の使用は、できるだけ避けるようにします。
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