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排尿痛
尿路の炎症や結石、腫瘍が原因となって、排尿の際に痛みを感じる状態
排尿痛とは、排尿の際に痛みを感じる状態。腎臓(じんぞう)、膀胱(ぼうこう)、尿道などの尿路の細菌感染による炎症、結石、腫瘍(しゅよう)が主な原因となります。
排尿の際のどの段階で痛みを感じるかによって、初期排尿痛、終末時排尿痛、全排尿痛に分けられます。
初期排尿痛は、尿の出始めに痛みを感じるもので、尿道炎の際に多く認められます。前立腺(ぜんりつせん)炎、淋菌(りんきん)感染症、性器クラミジア感染症などの疾患も疑われます。
終末時排尿痛は、排尿が終わる間際から終了後にかけて痛みを感じるもので、急性膀胱炎や前立腺炎、腎盂腎炎(じんうじんえん)、尿道結石などの疾患が考えられます。
全排尿痛は、尿の出始めから終わりまで持続する痛みを感じるもので、尿道狭窄(きょうさく)や尿道結石などのために排尿が障害され、尿道内圧が上昇することに起因することが多い症状です。膀胱炎が再発して慢性化していたり、腎盂腎炎などの疾患の際にもみられます。
痛みの性質により、焼け付くような痛みや、刺すような痛み、鈍く重苦しい鈍痛、ずきずき痛む疼痛(とうつう)などに分けられますが、痛みの感じ方は個人差がかなり大きく、男女の性差、年齢、基礎疾患の有無などによっても大きく異なります。また、痛みがごく軽い場合には、排尿時または排尿後の不快感として感じる場合もあります。
排尿痛を引き起こす尿道炎は、約20センチと長い尿道を持つ男性に多くみられる疾患です。原因のほとんどは、性行為による淋菌やクラミジア菌などの感染で、尿道に急性の炎症を起こします。淋菌の感染では、尿の出始めに焼け付くような強い痛みとともに、黄色いうみが混じります。クラミジア菌の感染では、尿の出始めの軽い痛みや染みる感じとともに、淡黄色や白色のうみが少量排出され、尿が濁ります。尿道炎を放置しておくと、全く排尿できなくなる尿道狭窄の原因にもなります。
前立腺炎は、20〜30歳代の若年層の男性に多い疾患です。主な原因は、尿道から侵入した大腸菌やブドウ球菌の感染で、男性の尿道後部を囲む前立腺に炎症を起こします。初期には尿の出始めに軽い痛みを感じ、それとともに頻尿や残尿感などが現れます。進行して炎症が強くなると排尿時の痛みが増し、前立腺肥大症に移行することもあります。
淋菌感染症は、淋菌による性感染症です。男性の場合、尿道が感染することで尿の出始めに焼け付くような強い痛みとともに、うみが尿に混じります。女性は顕著な症状が現れることが少なく、感染から数日後に外陰部のかゆみや下り物の増加が起こる程度なので、感染に気付かず慢性化することがあります。見過ごすと炎症が尿道や膀胱に広がり、排尿時に痛みを感じるようになります。また、妊婦が感染すると、新生児の結膜炎を招き、最悪は失明の危険もあります。
性器クラミジア感染症は、クラミジア菌による性感染症です。男性が感染すると、尿の出始めの軽い痛みや染みる感じとともに、淡黄色や白色のうみが少量尿に混じります。女性の場合、下り物が多少増える程度の軽い症状のため、感染に気が付かない場合も多くあります。進行すると不妊の原因となったり、妊婦の場合は胎児が産道の通過で感染し、重篤な肺炎や結膜炎を起こすこともあるので、注意が必要です。
急性膀胱炎は、膀胱内に細菌が侵入して急性の炎症を起こす疾患です。膀胱炎になるとトイレが近くなり、排尿が終わるころに痛みを感じたり、尿の濁りや血尿などの症状が現れます。圧倒的に尿道が約4センチと短い女性に多く、再発しやすくて慢性化すると尿がたまるだけで痛みが生じたり、排尿の間中ずっと痛みを感じるようになります。性交渉による感染が原因になることもあります。
腎盂腎炎は、腎臓からの尿が集まる腎盂や、腎臓そのもの(腎実質)が細菌に感染して起こる疾患です。排尿が終わるころや、排尿の間ずっと痛みを感じるようになり、尿中の白血球が増えるために尿の濁りが生じます。また、悪寒を伴う高熱、血尿、背中から腰にかけての響くような痛みや吐き気、嘔吐などが現れます。主な原因は下半身の冷えによるもので、この悩みを抱える女性に多くみられる疾患です。
尿道結石は、腎臓や膀胱でシュウ酸や尿酸などの塩類が石のように固まって作られた結石が、尿の最終的な通路である尿道の途中にとどまる疾患です。尿の流れに乗って移動した結石が尿の通り道を傷付けるために、尿が出終わるころに刺すような強い痛みを感じます。時には、突然の激痛や冷や汗、吐き気、嘔吐(おうと)を伴うこともあります。排尿に時間がかかるとともに残尿感があり、トイレに行く回数も増え尿が濁ることもあります。
尿道狭窄は、尿道の内側が狭くなるために尿が出にくくなる疾患です。かつては淋病や結核菌による慢性的な炎症が原因になるケースが多くみられましたが、近年は手術や検査などで尿道にカテーテルや内視鏡を挿入することで、尿道を傷付けてしまうために起こるケースも多くみられます。排尿の間、ずっと痛みを感じるようになり、尿が細くなります。さらに進行すると、全く排尿できなくなることもあります。
なお、生理痛と関連して周期的に排尿痛、排尿違和感を感じる女性の場合、子宮内膜症などの婦人科疾患が関係していることもあります。また、更年期症状の一部として、頻尿や尿漏れなどの排尿症状の中に排尿痛を感じることもあります。
排尿時の痛みが強い時や長期間続く時には、泌尿器科で診察を受けましょう。性感染症の疑いがある時は、泌尿器科または婦人科を受診しましょう。万が一性的パートナーが感染していた時は、自覚症状がなくても感染している可能性がありますので、必ず自分も診察を受けましょう。
排尿痛の検査と診断と治療
泌尿器科、ないし婦人科の医師による診断では、症状および各種検査を総合し、排尿痛の原因を確定します。一般的には問診、尿検査、超音波検査、血液検査、尿流動態(ウロダイナミクス)検査(膀胱内圧、腹圧、排尿筋圧、外尿道括約筋活動、尿流量測定)、尿路造影検査、内視鏡検査などを行って、排尿痛の原因を探ります。
泌尿器科の医師による治療は、排尿痛の原因になる疾患の種類によって異なり、基礎疾患があればその治療が第一です。
細菌性の尿道炎の治療では、抗生物質が有効ですが、短期間で治らず、しばしば慢性化します。慢性化しても、それほど強い症状は続きません。強い症状はなくても、ぐずぐずして治りにくいのが、慢性尿道炎の特徴です。
強い痛みや不快症状がある急性(細菌性)前立腺炎は、入院して鎮痛剤で痛みや不快症状を抑え、同時に感染菌に効く強力な抗生物質による治療を行います。前立腺は薬物移行が悪いため、治療効果が得られるまでに時間がかかることも多く、敗血症に移行することもあるので注意が必要です。また、再発を繰り返すと慢性化してしまうので、医師の指示通り、服薬や治療を継続しなければなりません。
逆に、慢性前立腺炎は大事に至ることはありません。慢性(細菌性)前立腺炎では、抗菌剤を4~12週間程度服用します。また、前立腺のマッサージで、分泌腺内にたまっている膿性分泌物を排出させます。
慢性(非細菌性)前立腺炎でも、細菌感染の可能性もある場合には、抗菌剤を4〜8週間程度服用します。細菌の可能性がない場合や、前立腺痛では、筋弛緩(しかん)剤、温座浴などの温熱治療、漢方薬が用いられます。さらに、精神科医との連携も必要な場合があります。
淋菌感染症の治療では、抗生物質(抗生剤)のスペクチノマイシンの筋肉注射、セフォジジムの静脈注射、セフトリアキソンの静脈注射などを症状に応じて実施します。1日から7日間の抗生物質の注射を行い、3日以上たってから淋菌がいないか再検査を行います。
性器クラミジア感染症の治療では、キノロン系、テトラサイクリン系の抗生物質が非常に有効です。通常は、7~14日間服用します。また、性的パートナーへの治療も大切です。
急性膀胱炎の治療では、原因菌に有効な抗生物質、抗菌剤が投与されます。一般に女性では、合併症が起こっていなければ、2~3日で症状は軽快します。感染が長引く際には、抗生物質を7~10日間服用します。男性では投与期間が短いと再発を繰り返すため、一般に抗生物質を10~14日間服用します。男女とも、水分の摂取を多くして尿量を増やし、細菌を洗い流すほか、尿の刺激性を低下させて症状を和らげます。症状の強い際は、十分な休息、睡眠を確保するようにします。
慢性膀胱炎の場合には、症状は比較的軽く、ほとんど自覚しないこともあります。尿検査で偶然に発見されることが、普通です。膀胱に腫瘍、結石があったり、結核、前立腺、腎臓の病気などが膀胱炎の陰に隠れている際に、慢性化しやすいものです。
慢性膀胱炎の治療では、抗生物質や抗菌剤が2~4週間、使用されます。原因疾患がある際には、そちらを治療しない限り、完治しません。特に原因疾患もなく、症状のほとんどない際は、経過観察となることもあります。
腎盂腎炎の治療では、感染している細菌に有効な抗生物質、抗菌剤を投与します。若い女性によくみられる急性の腎盂腎炎では、治療薬の進歩により、特殊なケースを除いては速やかに改善します。慢性の腎盂腎炎は、10〜20年といった長い期間をかけて、腎臓機能が悪くなる場合もあり、完全に治癒させるためには長期間、抗生物質やサルファ剤を投与します。生活上の注意として、症状が著しい急性期には、水分を多量にとって、尿量を多くすることが大切になります。
尿道狭窄の治療では、内視鏡を用いて、狭いところを切開する場合が多いのですが、切開手術を要することもあります。いずれにしても、処置後も比較的長期間、ある程度の拡張処置を外来で続ける必要があります。
尿道結石の治療では、痛みや繰り返す膀胱炎、腎盂腎炎などの症状がなければ、尿とともに自然に出てくるまで経過観察で様子をみることもあります。症状がある場合や大きな結石の場合は、結石に超音波などの物理的エネルギーを加え、そのエネルギーで結石を粉砕し、体外に出す破砕療法や、手術によって除去します。
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