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ビタミンK2
主に微生物によって産生され、納豆やチーズなどの発酵食品に含まれるビタミンK類の一つ
ビタミンK2とは、主に微生物によって産生され、納豆やチーズなどの発酵食品に含まれるビタミンK類の一つ。メナキノンとも呼ばれています。
ビタミンK2は側鎖の長さの違いにより、さらにメナキノン-4からメナキノン-13までの11種類の同族体 (類似の化合物)に分類されています。その中で食品に多く含まれるのは、動物性食品に広く分布するメナキノン-4と、納豆菌によって産生され納豆に含まれるメナキノン-7。
納豆は最も多くのビタミンK2を含む食品の一つであり、納豆に含まれているメナキノン-7はビタミンK類の中で最も栄養価が高いとされています。
ビタミンK2は腸内細菌によって腸内でも合成され、その量は生体内での必要量の大部分を満たすと考えられていますが、正確な量までははっきりしていません。
通常、ビタミンK2に属するメナキノン-4とメナキノン-7に、ビタミンK1に相当するフィロキノンを総称してビタミンKと呼びます 。
そのビタミンKとは、血液の正常な凝固に関係する因子として、1929年にデンマークのダムによって発見された脂溶性ビタミン。名前は、オランダ語の「凝固(Koagulation)」の頭文字に由来しています。
ビタミンKには、ビタミンK1からビタミンK7の7種類があり、天然型と人工合成型の2つに分けられます。自然界に存在する天然型は、ビタミンK1とビタミンK2の2種類で、通常、ビタミンKと総称されるもの。ビタミンK1に相当するフィロキノンは、主に植物に含まれ、葉菜類、豆類、植物油、海草類、緑茶、魚介類などに含まれています。一方、人工合成型は、悪影響があり使用中止となっているビタミンK3、医薬品や食品添加物として使用されているビタミンK4など。
ビタミンK1とビタミンK2の作用は同一ですが、ビタミンとしての働きからするとK1のほうがK2よりも効率がよく、人間の血液中のビタミンKのほとんどがK1です。
まず名前の由来となっているように、ビタミンK2など天然型のビタミンKは血液の凝固作用において働きます。出血時に血が自然に止まるのは体内に血液を凝固させる物質があるためで、その血液を凝固させるプロトロンビンという蛋白(たんぱく)質を活性化させる補酵素として働くのが、ビタミンKです。 ビタミンKが不足すると、当然のことながらプロトロンビンも不足して、出血時になかなか血が止まらなくなります。
血を止めることとは反対に、出血していない時には、ビタミンKは血管内の血液が固まるのを防ぎ、血液がスムーズに流れるように働いています。つまり、ビタミンKは、血液を凝固させる働きと、その逆に血液を凝固させない働きを、状況に応じて上手に使い分けているのです。
ビタミンKには、骨を丈夫に保つ働きもあります。骨に含まれる蛋白質の中で最も多いのは、ビタミンCと関係するコラーゲンであり、その次に多いのはビタミンK1が合成に関係する蛋白質のオステオカルシン。オステオカルシンはカルシウムが骨に沈着(石灰化)する時に必要で、ビタミンKはその働きを活性化させることでカルシウムの骨への沈着を促します。
これ以外にも、ビタミンKにはカルシウムが骨から流出するのを抑える働きもあり、複合的に骨を丈夫にするために働きます。また、カルシウムの取り込みとは逆に、動脈や腎臓(じんぞう)などに、動脈硬化や心臓病の原因となるカルシウムが沈着するのを防ぐ働きが、ビタミンKにはあります。
ビタミンKが不足すると、血液凝固の遅延のほか、鼻血、胃腸からの出血、月経過多、血尿などの症状が現れます。慢性的にビタミンKが不足すると、十分なカルシウムが骨に取り込めなくなるため、細くもろい骨になってしまい、骨粗鬆(こつそしょう)症や骨折を引き起こすことが知られています。
この意味で、納豆菌に由来するビタミンK2(メナキノン-7)を素材とするサプリメントや健康機能食品が市販されており、骨粗鬆症を始め動脈硬化、心臓病などの疾患のリスクを低減することが期待されています。
ビタミンK2とビタミンK1を総称する天然型のビタミンKの不足については、新生児において特に注意を払う必要があります。生まれてすぐの新生児はまだ腸内細菌が未発達なため、ビタミンK2が十分に腸内で合成されないためです。母乳中のビタミンKが不足した場合には、消化器官が出血して黒っぽい便が出る新生児出血(新生児メレナ)や、頭蓋(ずがい)内出血などが起こるケースがあります。
頭蓋内出血では、ビタミンの注射によって全治するケースもありますが、後遺症が残ったり、命が失われることもあるので、特に注意が必要です。
このため、妊娠後期の女性に対しては十分にビタミンKを摂取するように勧め、生後すぐの新生児にはビタミンK2のシロップを飲ませるといった方法がとられています。
逆に、血栓症の人や、普通の人より血液が固まりやすいために、ワーファリンなどを始めとする血液凝固抑制剤を服用している人では、ビタミンKを多く含む食品の摂取や、ビタミンK製剤の使用を制限しなければなりません。
ビタミンK2が多い食品としては、納豆やチーズなどの発酵食品が挙げられ、牛乳、乳製品、卵などの食品にも少量含まれています。ビタミンK1が多い食品としては、アシタバ、小松菜、ほうれん草、モロヘイヤ 、オカヒジキ、春菊、にら、パセリ、芽キャベツ、ブロッコリー、大根の葉、レタス、シソ、こんぶ、のり、ひじき、緑茶、抹茶、植物油などが挙げられます。野菜や納豆が苦手な人は、毎日一杯の緑茶や抹茶を飲むのもよいでしょう。
厚生労働省策定の「食事摂取基準10年版」では、ビタミンKの目安量は1日当たり成人男性で75μg(マイクログラム)、女性は18~29歳で60μg、30歳以上で65μgとしています。一般的には大量に摂取した時も過剰症がないため、上限量の定めはありません。
乳児については、生まれてから5カ月目までは4μg、6カ月目から1歳までは7μgを目安量としています。この目安量は、男の子でも女の子でも変わりません。
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