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ビタミンK
出血した血液を固める働きと、骨にカルシウムを沈着する働きがある脂溶性ビタミン
ビタミンKとは、血液凝固に関係する因子として発見された脂溶性ビタミン。名前は、オランダ語の「凝固(Koagulation)」の頭文字に由来しています。
ビタミンK1~ビタミンK7の7種類があり、その中で自然界に存在するのはビタミンK1とビタミンK2の2種類です。
ビタミンK1は、主に植物の葉緑体で作られるため、アシタバや小松菜、ほうれん草など緑色の濃い野菜や、海草に多く含まれます。同じ野菜でも、日によく当たる外側の葉のほうに、内側よりも多く含まれています。物質名はフィロキノン。
ビタミンK2は、主に微生物によって作られるため、納豆やチーズなどの発酵食品に多く含まれます。腸内細菌によっても合成され、その量は生体内での必要量の大部分を満たすと考えられていますが、正確な量までははっきりとはしていません。物質名はメナキノン。
ビタミンK1とビタミンK2の作用は同一ですが、ビタミンとしての働きからするとK1のほうがK2よりも効率がよく、人間の血液中のビタミンKのほとんどがK1です。
まず名前の由来となっているように、ビタミンKは血液の凝固作用において働きます。出血時に血が自然に止まるのは体内に血液を凝固させる物質があるためで、その血液を凝固させるプロトロンビンという蛋白(たんぱく)質を活性化させる補酵素として働くのが、ビタミンKです。 ビタミンKが不足すると、当然のことながらプロトロンビンも不足して、出血時になかなか血が止まらなくなります。
血を止めることとは反対に、出血していない時には、ビタミンKは血管内の血液が固まるのを防ぎ、血液がスムーズに流れるように働いています。つまり、ビタミンKは、血液を凝固させる働きと、その逆に血液を凝固させない働きを、状況に応じて上手に使い分けているのです。
ビタミンKには、骨を丈夫に保つ働きもあります。骨に含まれる蛋白質の中で最も多いのは、ビタミンCと関係するコラーゲンであり、その次に多いのはビタミンKが合成に関係する蛋白質のオステオカルシン。オステオカルシンはカルシウムが骨に沈着(石灰化)する時に必要で、ビタミンKはその働きを活性化させることでカルシウムの骨への沈着を促します。
これ以外にも、ビタミンKにはカルシウムが骨から流出するのを抑える働きもあり、複合的に骨を丈夫にするために働きます。
ビタミンKが不足すると、十分なカルシウムが骨に取り込めなくなり、細くもろい骨になってしまいます。このため、ビタミンKは骨粗鬆(こつそしょう)症の予防に有効です。また、カルシウムの取り込みとは逆に、動脈や腎臓(じんぞう)などにカルシウムが沈着するのを防ぐ働きが、ビタミンKにはあります。
ビタミンKの欠乏については、新生児において特に注意を払う必要があります。生まれてすぐの新生児はまだ腸内細菌が未発達なため、ビタミンKが十分に腸内で合成されないためです。母乳中のビタミンKが不足した場合には、消化器官が出血して黒っぽい便が出る新生児出血(新生児メレナ)や、頭蓋(ずがい)内出血などが起こるケースがあります。
頭蓋内出血では、ビタミンの注射によって全治するケースもありますが、後遺症が残ったり、命が失われることもあるので、特に注意が必要です。
このため、妊娠後期の女性に対しては十分にビタミンKを摂取するように勧め、生後すぐの新生児にはビタミンK2のシロップを飲ませるといった方法がとられています。
逆に、血栓症の人や、普通の人より血液が固まりやすいために、ワーファリンなどを始めとする血液凝固抑制剤を服用している人では、ビタミンKを多く含む食品の摂取や、ビタミンK剤の使用を制限しなければなりません。
ビタミンKが多い食品としては、アシタバ、小松菜、ほうれん草、モロヘイヤ、オカヒジキ、春菊、にら、パセリ、芽キャベツ、ブロッコリー、大根の葉、レタス、シソ、こんぶ、のり、ひじき、納豆、チーズ、緑茶、抹茶、植物油などが挙げられます。野菜や納豆が苦手な人は、毎日一杯の緑茶や抹茶を飲むのもよいでしょう。
厚生労働省策定の「食事摂取基準10年版」では、ビタミンKの目安量は1日当たり成人男性で75μg(マイクログラム)、女性は18~29歳で60μg、30歳以上で65μgとしています。大量に摂取した時も過剰症がないため、上限量の定めはありません。
乳児については、生まれてから5カ月目までは4μg、6カ月目から1歳までは7μgを目安量としています。この目安量は、男の子でも女の子でも変わりません。
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