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ページェット病
乳房、外陰部、肛門部に発生する皮膚の異常
ページェット病とは、乳房、わきの下、外陰部、肛門(こうもん)部などに発生する皮膚の異常。
通常、乳房(にゅうぼう)ページェット病と、乳房外ページェット病に分けられます。前者は、乳がん、すなわち乳管浅部がんの皮膚への浸潤で、イギリスの外科医ジェームス・ページェットによって発見されました。後者の多くは、がん前駆症と見なされます。
症状は一般に、かゆみやムズムズする違和感から始まり、淡紅褐色から鮮紅色の赤色調の色素斑(はん)として、病変が皮膚に現れます。乳房にできるものは、湿疹(しっしん)様の変化のほか、乳頭のびらんがあります。腫瘤(しゅりゅう)は触れません。
乳房外にできるものは、男女ともに外陰部を中心に発生し、わきの下も含めて、体臭のもとであるアポクリン汗腺(かんせん)の多い皮膚に同時に多発することもあります。男性ではペニスの根元に病巣の中心を持つことが、また、女性では太ももの根元に左右同時に発生することが多いようで、時に脱色素斑もみられます。
いずれも赤みの強い、ジトジトした局面で、湿疹として治療されている場合が多いので、注意が必要です。乳房外にできるものは、男性ならば、いんきんたむし、女性ならば、カンジダ症と間違いやすく、市販の湿疹や水虫の薬を塗り、医師に診せてもページェット病と診断が確定できずに時間がたってしまいがちです。
診断や治療が遅れれば、真皮内に浸潤してページェットがんになり、びらんや潰瘍(かいよう)を伴うようになり、予後不良となる場合があります。乳房外ページェット病の場合、日本では高齢者に好発して、男性が女性の2倍ほど多く、女性のほうが多い欧米と異なっています。
ページェット病の検査と診断と治療
長い間続いていた皮膚の異常が急に変化して、びらん、潰瘍を生じたり、大きさが増した時には、すぐに皮膚科専門医の診断を受けます。
乳房外ページェット病の場合、病変が外陰部であるため病院に行くのが恥ずかしく、いんきんたむし、湿疹、カンジダ症と自己診断して市販薬を購入し、使用している発症者を多く見掛けます。当然のことながら、これらの自己治療には反応しません。
専門医が視診すると診断がつくことが多いのですが、湿疹など他の皮膚病との鑑別は必ずしも簡単ではありません。確実に診断するためには、病変の一部を切り取って組織検査をする生検が必要です。
ページェット病の治療法としては、外科的切除が原則です。外科手術以外の方法として、体力のない高齢者に対する放射線照射、抗がん剤による化学療法などが行われていますが、あまり効果は期待できないとされています。
切除範囲の決定には、手術前に病巣辺縁部から少し離れた部位で、多数箇所の生検を行います。乳房外ページェット病では、組織学的には乳房ページェット病ではみられない表皮内におけるページェット細胞のスキップ現象がみられることが多いため、切除範囲を決定するのが容易ではありません。
ページェット病の原発巣が大きい場合は、ページェットがんに進行していることもあり、特に隆起性病変となっている時は、進行がんを疑います。一方で、意外に早く浸潤してリンパ節に転移する場合がありますので、MRI検査あるいはCT検査により、リンパ節の検索も行ったほうがよいとされています。
手術では、病巣辺縁から3~5センチ離して、皮下脂肪組織の中層の深さで切除します。広範な欠損となりますが、一般的には植皮で修復されます。リンパ節転移が疑われる場合には、リンパ節郭清(かくせい)術を行います。
女性の乳房外ページェットがんの進行例では、時に尿路変更や人工肛門の造設を必要とし、会陰部の組織欠損に対しては筋皮弁などを用いた再建手術を行います。
予後は、ページェット病かページェットがんかで全く異なります。ページェット病であれば、根治手術さえなされれば予後は良好です。ページェットがんでは、転移の程度にもよるものの予後は良好とはいえません。
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