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胆道閉鎖症
新生児や乳児の肝臓と腸をつなぐ胆道の内腔が詰まり、胆汁を腸に出すことができない疾患
胆道閉鎖症とは、肝臓と腸をつなぐ胆道(胆管)という管の内腔(ないくう)が炎症のために狭くなったり、詰まったりして、肝臓で作られた胆汁を腸に出すことができない疾患。
新生児期から乳児期早期に発症する疾患で、先天的発生異常説、ウイルス感染説、免疫異常説などいろいろの説があるものの、現在のところ、まだ明らかな原因は解明されていません。
母親の胎内で一度作られた胆道が、原因不明の炎症のために狭くなったり、詰まったりするものが多いのではないかとされています。出生1万人から1万5000人に約1人の頻度で発症し、男の子の約2倍と女の子に多く発症しています。
肝臓で作られた黄色い胆汁は本来ならば、肝臓の外にある肝外胆道(胆管)である胆道、胆嚢(たんのう)、総胆管を通って十二指腸から腸管の中に流れ出ていき、食物中の脂肪の吸収を助けるのですが、胆道閉鎖症では胆汁が腸管に流れなくなります。
胆汁の流れが停滞しても肝臓は胆汁を作り続けるので、行き場のなくなった胆汁成分は肝臓にたまることになります。そして、肝臓から血液の中にあふれ出て、血液中のビリルビン(胆汁色素)が過剰に増えて、皮膚や白目の部分が黄色く見える黄疸(おうだん)を起こします。
また、胆汁が腸管に流れないので便は黄色みが薄くなって灰白色となる一方、胆汁の分解産物が流れる尿は黄色みが濃くなって濃褐色になります。
さらに、肝臓にたまった胆汁は肝臓の組織を破壊し、進行すると肝臓は線維化して硬くなり、胆汁性肝硬変といわれる状態に至ります。
肝臓は本来ならば、再生能力の非常に高い臓器なのですが、いったん肝硬変になると線維化の産物である結合組織に再生を遮られるため、元の健康な肝臓に戻ることが困難になります。
肝硬変へ進むと門脈圧高進症が起こり、これに伴って食道静脈瘤(りゅう)、胃静脈瘤、脾腫(ひしゅ)、腹水など、二次的な症状が現れます。腹水がたまると横隔膜を圧迫したり、肺内の血行障害が起こって呼吸障害が生じることもあります。
胆汁の排出障害が強いと食物中の脂肪吸収が障害され、脂溶性ビタミンの吸収も悪くなってビタミンK欠乏症を起こすほか、肝機能障害から血液凝固因子が作れなくなり、出血傾向が強くなって消化管出血や脳出血などを起こすこともあります。
新生児や乳児の黄疸と灰白色便が長引く場合は、すぐに小児科を受診することが勧められます。胆道閉鎖症は、出生後8週間以内に手術することが大切で、8週間を過ぎると肝臓の線維化が進み、手術後の胆汁排出効果が悪くなります。
胆道閉鎖症の検査と診断と治療
小児科、消化器外科の医師による診断では、血液検査、尿検査、便検査、十二指腸液検査、肝胆道シンチグラム、腹部超音波検査などを必要に応じて組み合わせて行います。
十二指腸液検査は、十二指腸にチューブを入れて十二指腸内の液を採取し、胆汁の有無を調べるものです。肝胆道シンチグラムは、胆汁中に排出される放射性活性物質を用いて、胆汁の流出状況を調べるものです。
小児科、消化器外科の医師による治療では、まずは肝臓で作られた胆汁が腸管に流れるようにするため、肝臓からの胆汁の出口付近と腸管を縫い合せる手術を行います。肝臓の線維化が進まないうちであれば、手術を行うことで約7割から8割で黄疸が消え、改善が認められます。
手術後は、胆汁の流出をよくする利胆剤、細菌感染を予防する抗生剤などを服用します。退院後も、利胆剤に加えてビタミン剤を服用します。
手術後も胆汁排出が認められない場合、黄疸が消失しない場合、手術後に黄疸が再発した場合、胆管炎や門脈圧高進症などを合併した場合には、最終的に肝移植を行います。
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