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直腸性便秘
主に、排便を我慢する習慣が便意を感じにくくさせるために起こる便秘
直腸性便秘とは、主に排便を我慢する習慣が便意を感じにくくさせるために起こる便秘。習慣性便秘、単純性便秘とも呼ばれます。
便秘は通常、排便回数が少なくて、3日に1回未満、週2回未満しか、便の出ない状態です。
便が硬くなって出にくかったり、息まないと便が出なかったり、残便感があったり、便意を感じなかったり、便が少なかったりなど多様な症状も含みます。便の水分が異常に少なかったり、うさぎの糞(ふん)のように固い塊状なら便秘です。
直腸性便秘は、生活習慣が主な原因となって起こる慢性の便秘で、現代人に多くみられます。朝はぎりぎりまで寝ていて朝食抜き、トイレに行く時間もなく家を飛び出すような生活をしている人に多く、便意が起こっても、時間がないからと排便を我慢し続けた結果、便意を催さなくなるものです。あるいは、排便痛を伴うような肛門(こうもん)の疾患である痔(じ)のために、排便を我慢し続けた結果、便意を催さなくなるものです。
便が大腸の中で肛門に最も近い直腸の中に進入すると、直腸の壁が伸びる刺激で便意は起きますが、この便意は排尿感覚と違って、15分ぐらい我慢していると消えてしまうのが特徴。
排便を我慢することが度重なると、刺激に対する直腸の神経の感受性が低下して、直腸内に便が入っても便意が起こらなくなってしまい、大腸の蠕動(ぜんどう)運動も始まらないことから、直腸性便秘となります。そして、便が長いこと直腸にたまっていると、水分がどんどん吸収されて硬くなり、ますます出にくくなって、直腸性便秘が慢性化します。
便は太くて硬い、分割便となりやすいのが特徴で、その便が排出されると、その奥からむしろ軟らかい便が一挙に排出されることもあります。
直腸性便秘になると、便通不良で直腸の壁や肛門を傷付けたり、痔を悪化させるばかりでなく、腸内容物の腐敗などが進行して有害物質が生成され、下腹部不快感、膨満感、腹痛などの障害を来すこともあります。肌のトラブルや大腸がん発生の引き金になることもあります。
排便を我慢する習慣が直腸の神経の感受性を低下させて起こるほか、骨盤の底にあって下腹部の臓器を支えている骨盤底筋の機能の悪化で、直腸性便秘が起こることもあります。
骨盤底筋は排便時に緩むことで、直腸と肛門を真っすぐつなげる役割を持ち、その作用で便をスムーズに送り出すことが可能になっています。この骨盤底筋の機能が悪化して、排便時に緩まずに緊張した状態が続くと、便の通り道ができなくなり、便の排出が困難な状態になります。
しかも、便秘を治すために食物繊維や水分をいくら補給しても、通り道がなくては便は腸内にたまる一方で、便秘を逆に悪化させることになります。
さらに、女性だけにみられる症状で、度重なる出産や加齢などで直腸と膣(ちつ)の間にある直腸膣隔壁が弱って、排便しようと息んだ時に直腸の一部が膣側に膨らむ直腸瘤(りゅう)ができることで、便が直腸瘤に入り込んでうまく排出できずに、直腸性便秘が起こることもあります。直腸瘤に入り込んだ便は、どんどん水分を奪われて硬くなり、ますます排出しにくい状態になります。
それ以外に、手術で腸管を切除した場合や、下剤や浣腸(かんちょう)を多用した場合に、直腸の神経の感受性が低下して直腸性便秘が起こることもあります。
直腸性便秘に当てはまる症状が出ている場合は、肛門科、消化器科、婦人科を受診することが勧められます。
直腸性便秘の検査と診断と治療
肛門科、消化器科、婦人科の医師による診断では、問診による病歴の聞き取り、腹部の触診、直腸の指診が重要です。
腹部の触診では、腹部腫瘍(しゅよう)の有無、腹筋の筋力をチェックします。直腸の指診では、肛門部病変、肛門と直腸の狭窄(きゅうさく)あるいは腫瘍、直腸内の便の有無、便の潜血反応を調べます。
通常の検査として、検便、検血、腹部X線(レントゲン)検査を行い、便秘が持続していたり腹痛がある場合には、肛門から腸の中に軟らかい造影剤を注入してX線撮影をする注腸造影、あるいは大腸内視鏡検査を行います。
腹部腫瘤、イレウス(腸閉塞〔へいそく〕)などが疑われる場合には、腹部超音波(エコー)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査を行います。
肛門科、消化器科、婦人科の医師による治療は、原因によって対処方法が変わります。
直腸の神経の感受性が低下したために起こる直腸性便秘の場合、生活習慣を改善することで治療の効果を期待できます。便意があれば我慢しないですぐにトイレに行くこと、そしてトイレに行く時間を生活リズムの中に組み込んで習慣化することで、便意を促すことができるからです。
また、便が硬いままだと便意が感じにくくなりますので、食生活も見直して、牛乳とバナナなどの果物だけの朝食でもよいので摂取を心掛け、水分補給と食物繊維を多く含む食品の摂取も心掛けます。腸を活動させるために、適度で定期的な運動をして血液の循環をよくするのも効果的。まず便秘を治せば、便意も正常に感じるように感覚が戻ってきます。あまりにもひどい場合には、座薬を適切に使うことでも症状の緩和がみられます。
骨盤底筋の機能が悪化したために起こる直腸性便秘の場合、排便時の姿勢や息み方を正して骨盤底筋を矯正する指導をしたり、座薬などを用いて治療します。
骨盤底筋を矯正する手順は、1)排便時には上体を前傾させて両ひじを太ももの上に置く(前傾姿勢になると直腸肛門角が開いて便がスムーズに直腸へ送られるため)、2)かかとをおよそ20度上げる(腹筋の力を腸にかけやすくなるため)、3)息む時は、腰に手を当ててせきをした時に動く筋肉である腹筋だけに力を入れる(肩や背中に力を入れて全身で踏ん張らないようにするため)。トイレに行った時に、この手順を繰り返すようにすることで、骨盤底筋を回復させることができます。
直腸瘤ができて排便が困難になる直腸性便秘の場合、軽度のケースでは、下剤や座薬で便通をコントロールする方法を取ります。指で会陰(えいん)や膣を押さえないと排便できなかったり、薬を飲んでも指でかき出さないと出ないほどひどい重度のケースでは、手術を考慮します。骨盤底筋の一部を縫い合わせて直腸瘤の前に堅い壁を作ることで、強く息んでも直腸が膣側に飛び出さないようにする手術です。
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