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多尿

1日の排尿量が3リットル以上と、多量にある状態

多尿とは、1日の排尿量が3リットル以上と、多量にある状態。1日の排尿量が多量になくても、日中または夜間に頻回な排尿を必要とする頻尿とは、少し異なります。

多尿は、単に水分の摂取量が多くて尿が多量に出るケースと、多尿を来す疾患があって尿が多量に出るケースとに分けられます。また、排尿中に水分そのものが多い水利尿と、排尿中に溶質が多い浸透圧利尿(溶質利尿)とに大きく分けられます。

尿を作る人間の腎臓(じんぞう)は非常に精密にできており、水分の摂取量によって排尿の量を変化させ、体の中の水分の量を一定にしています。従って、水分を大量に摂取すれば排尿の量も増えることになります。通常、1日の排尿量は1〜2リットルであり、昼間に排尿をする回数は7回程度ですが、水分をたくさん摂取して2リットル以上の尿を出す正常な人もいて、昼間に排尿をする回数も増えます。

多尿を来す代表的な疾患は、糖尿病、中枢性尿崩症、腎性尿崩症、急性腎不全、慢性腎不全、慢性腎盂(じんう)腎炎です。また、水利尿を来す代表的疾患が中枢性尿崩症、腎性尿崩症で、浸透圧利尿を来す代表的疾患が糖尿病です。

異常にのどが渇くために水分を大量に摂取し、その結果として多尿となるのは、糖尿病の症状です。糖尿病では、血液中の糖分が増加して尿に漏れ出し、尿の浸透圧が上昇して尿の量が増えます。また、糖分が尿に漏れ出すと腎臓で尿を濃くする尿濃縮力が悪くなるのも、尿の量が増える原因となります。この場合には、糖分が含まれた濃く、比重の高い尿が多量に出ます。

腎臓で尿濃縮を行って、排尿量を適量に抑えているホルモンは抗利尿ホルモンと呼ばれ、大脳の下部に位置する視床下部で合成され、神経連絡路を通って脳下垂体後葉に運ばれて貯蔵され、血液中に放出されます。抗利尿ホルモンが分泌されると尿は濃くなり排尿量は減少しますが、逆に抗利尿ホルモンが分泌されないと尿は薄くなり排尿量は増加します。従って、脳下垂体が外傷、腫瘍(しゅよう)、脳出血、脳炎などによって障害を受けると、抗利尿ホルモンが分泌されずに、多尿になります。これを中枢性尿崩症(下垂体性尿崩症)といいます。

次に、この抗利尿ホルモンが正常に分泌されても、作用部位である腎臓の尿細管の障害があると抗利尿ホルモンに反応しないため、老廃物や塩類を排出するために排尿量を多くする必要が出てきます。この時も、のどが渇くために水分を大量に摂取し、その結果として多尿になります。この場合には、薄く、比重の低い尿が多量に出ます。これを腎性尿崩症といいます。

この腎性尿崩症には、遺伝によるものと、他の疾患などから尿細管の障害が引き起こされた続発性の2つがあります。

続発性腎性尿崩症の原因としては、慢性腎不全、慢性腎盂(じんう)腎炎、間質性腎炎、閉塞(へいそく)性尿路疾患などの腎疾患、シェーグレン症候群、多発性骨髄腫、高カルシウム血症、リチウムやデメクロサイクリンなどの薬剤の副作用があります。

尿崩症の症状はいずれの年代でも、徐々にあるいは突然、発症します。発症すると、脱水状態になるため、のどが渇いて過剰に水分を摂取するといった症状が現れ、多尿になります。1日に排出される尿量は3~15リットルにもなります。ひどい時には、1日30リットル〜40リットルになることもあります。薄い尿の大量排出は、特に夜間に著しくなります。水をたくさん飲むために、食べ物があまり取れず、体重は減少します。

続発性尿崩症では、口渇、多飲、多尿に加えて、原因となる疾患の症状を示します。腫瘍が原因の場合、腫瘍が拡大すれば頭痛、視野障害、視床下部・脳下垂体前葉機能低下症状などを示します。脳下垂体前葉機能低下の程度が強く、高度の副腎皮質刺激ホルモンの分泌不全を伴うと尿量は減少し、尿崩症の症状ははっきりしなくなります。この場合、副腎皮質ホルモンを補充すると多尿がはっきりしてきます。

一般に、口渇中枢は正常であるため、多尿に見合った飲水をしていれば脱水状態になることはありませんが、続発性尿崩症で口渇中枢も障害されている場合は重症の脱水を来すことがあります。

水分の多飲による多尿は、精神的な障害でも起こります。精神的原因で強迫的に多飲する心因性多飲症や、脳腫瘍などで起こる症候性多飲症に分けられます。心因性多飲症は、更年期障害で起こる症状の1つとして中年女性に多くみられます。症候性多飲症は、脳下垂体の障害で起こる抗利尿ホルモン分泌低下とは異なり、脳での飲水中枢障害によるものです。

1日3リットル以上の著しい多尿や口渇、多飲などの症状がみられた際には、糖尿病や腎疾患、心因性多飲症とともに尿崩症である可能性があります。泌尿器科、腎臓内科、内分泌内科、頭部外傷や脳手術の既往歴がある人は脳外科か脳神経外科の専門医と相談して下さい。

多尿の検査と診断と治療

泌尿器科、腎臓内科、内分泌内科の医師による診断では、多尿を来す疾患が中枢性尿崩症か腎性尿崩症と見なした場合には、まず多飲、多尿を示す糖尿病、腎疾患を除外する必要があります。これらが除外された後、心因性多飲症などとの鑑別が必要になります。

血漿(けっしょう)浸透圧と血中の抗利尿ホルモンを測定して、鑑別診断に用います。鑑別が難しい場合、水制限試験を行います。水分摂取の制限を行っても、中枢性尿崩症では尿浸透圧が血漿浸透圧を超えることはありませんが、心因性多飲症では尿浸透圧が血漿浸透圧を超えて濃縮がみられます。腎性尿崩症では、抗利尿ホルモンは高値になります。

中枢性尿崩症では、下垂体後葉に抗利尿ホルモンの枯渇を反映する変化がみられます。また、続発性尿崩症の原因となる脳腫瘍などの疾患の検索にも有用です。

中枢性尿崩症と腎性尿崩症の区別は、利尿ホルモンの合成類似体であるバソプレシン剤の投与によって、尿が濃縮されるかで調べます。尿が濃縮されるのが中枢性であり、反応しないのが腎性です。

泌尿器科、腎臓内科、内分泌内科の医師による治療では、中枢性尿崩症には補充療法としてバソプレシン剤や、デスモプレシン剤を点鼻液、あるいはスプレーとして用います。1日2〜3回使用すると、尿量は普通並みに減少します。その他、注射製剤も使用できます。

意識がなくなったり、胃腸障害で水が飲めなくなった時には、速やかに点滴静脈注射をして水分を補給します。腫瘍が原因で続発性尿崩症が起こった時には、手術をして腫瘍を取り除きます。

腎性尿崩症には、有効な薬剤は今のところありません。多くの場合、バソプレシン剤や、デスモプレシン剤を用いた治療を行います。 尿量を減らす目的で、抗利尿ホルモンの産生を刺激するサイアザイド系利尿薬を使用することもあります。

なお、糖尿病で異常にのどが渇くために水分を大量に摂取し、その結果として多尿となる人が水分補給に関して注意しておくべきは、のどが渇いても糖分が多い飲み物をなるべく飲まないということです。乳飲料、果実系飲料、炭酸飲料などの糖分が多い飲み物は血液中の糖分濃度を上げるので、再びのどが渇くという悪循環を繰り返すようになりますので、水や白湯(さゆ)、あるいはお茶などを飲むようにしましょう。

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