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トリプトファン

不足すると精神的に不安定になり、睡眠障害を起こすことがある必須アミノ酸

トリプトファンとは、全部で9種類ある中で、特に精神的作用があることで知られている必須(ひっす)アミノ酸。神経アミノ酸と呼ばれることもあります。

蛋白(たんぱく)質の生合成の材料となるほか、肝臓、腎臓(じんぞう)で分解されエネルギー源となります。血液から脳に運ばれると、トリプトファンはビタミンB6、ナイアシン(ビタミンB3)、マグネシウムとともに、神経伝達物質であるセロトニンを生成し、精神安定、催眠、鎮痛などの作用を及ぼします。

そのセロトニンは脳の松果体によって、若返りホルモンといわれるメラトニンに変換されます。メラトニンには、睡眠サイクルを正常にしたり、活性酸素を減少させるなどの作用があります。また、トリプトファンはアミノ酸の一種であるチロシンとともに、神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンの生成に関与しています。

これまでの研究では、脳の病気や行動障害の治療に効果があることがわかっており、不眠症やうつ病の治療でも効果が期待できます。そのほか免疫系に働き掛けて、がんの予防、コレステロールや血圧の調整、性機能の回復、更年期障害の症状緩和などにも幅広く効果があります。アルツハイマー型認知症やパーキンソン病、子供の多動症、エイズなどの症状改善にも有効な働きがあり、研究が進められています。

トリプトファンが不足すればセレトニンが減少し、精神的に不安定になりやすく、不眠症、痛みなどを起こすことがあります。近年、ストレスに弱い人が増えているのは、ダイエットや偏食により食品から十分なトリプトファンを摂取できなくなったことも一因と考えられています。

一方、トリプトファンの過剰摂取は肝臓で脂肪の変化を起こし、肝硬変を招く可能性があります。肝硬変になると、セロトニンが増加しすぎて昏睡(こんすい)状態に陥ります。アメリカでは精神安定、不眠解消を目的とした栄養補助剤にもなっていますが、長期に渡っての服用は危険です。

食品では、肉、魚、小麦、大豆、種子、豆乳や乳製品、バナナ、パイナップル、アボガド、緑黄色野菜などさまざまな食品中の蛋白質に含まれていますが、含有量は多くはありません。トリプトファンの摂取を心掛けるなら、いろいろな食品を満遍なく口にすることです。特にレバー、魚、肉などに多く含まれていナイアシン(ビタミンB3)と一緒に摂取すると、トリプトファンを効果的に摂取できることになります。

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