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腸結核

腸に結核菌が感染して起こる疾患

腸結核とは、結核菌が腸に感染して起こる疾患。炎症を起こし、潰瘍(かいよう)を形成します。

口から入った結核菌が直接、腸に初めての病巣を作る時は、原発性腸結核といいます。しかし、肺など多臓器の結核病巣から2次的に発症することが多く、結核菌のついた、たんを飲み込んで腸にたどり着くか、肺などの結核菌が血流に乗って腸に行き定着します。

回腸末端部と盲腸の周辺、上行結腸に発生するものが多く、潰瘍が多発して穿孔(せんこう)を起こすこともあります。また、腸管の周囲のリンパ節に感染して腸間膜リンパ節結核を起こしたり、結核性腹膜炎を合併することが少なくありません。

太平洋戦争前後は非常に多い疾患でしたが、抗結核剤の進歩と生活水準の上昇、衛生環境の整備が進んできた結果、肺結核とともに急速に減少して、かつてのような青壮年のひどい腸結核はあまりみられなくなりました。

しかし、人口の高齢化によって、高齢者の結核が増え始め、それに伴って腸結核も発生するようになっています。現在の高齢者は若い頃に結核流行時を経験しているため、すでに結核に感染している人が多く、体力と免疫力が低下した時に、眠っていた結核菌が目を覚まして増殖し始め、肺結核や腸結核を発症しやすくなります。

また、腸結核の場合、比較的若い30歳代から40歳代、特に女性に好発します。若い世代の多くは結核菌に未感染のため、結核菌を吸い込むと感染しやすく、早い時期に肺結核や腸結核を発症する危険があります。

腸結核の症状としては、下痢、便秘、腹痛が主です。下痢と便秘が交互に起こることもあります。腹痛で最も多いのは、右下腹部とへその回りの痛みで、また、腹部が張ってきて、腸内にガスがたまり、しばしば腹がゴロゴロ鳴る腹鳴が起こります。

腸の狭窄(きょうさく)が起これば、強い痛みがあり、腹鳴が強くなります。腸結核が進行すると、貧血、体重減少のほか、発熱と食欲不振もみられます。

腸結核の検査と診断と治療

肺結核、腸結核が疑われた場合は、設備の整った病院で診断を受けます。結核と診断された場合は、結核予防法が適用され、医療費の一部が公費負担となります。

適切な治療で完治する疾患ですから、症状がなくなった後も治療を継続することが重要です。腸結核だけの場合、通常は他人に感染させることはありません。

医師による診断では、腸結核が肺結核に続いて発生することが多いので、ある程度、その存在が疑われます。確定診断は、腸のX線検査と内視鏡検査によって行われます。
 X線検査では、腸管を下剤で完全に空にした状態で、肛門(こうもん)から造影剤と空気を入れてX線撮影し、大腸から回腸下部を入念に調べます。

このX線検査で腸結核が疑われる場合は、大腸ファイバースコープ、または大腸電子内視鏡を肛門から挿入して、病変を観察して生検を行って、その病理組織像を調べ、結核菌や乾酪性肉芽腫(かんらくせいにくげしゅ)といわれる特徴的な病変がみられれば、診断が確定します。

そのほか、血液検査、糞便(ふんべん)検査などのデータも参考にされます。

腸結核の治療では、肺結核と同様に抗結核剤が有効です。使用される抗結核剤は、イソニアジドとリファンピシンの2者併用が多く、それにストレプトマイシンやエタンブトールなどを組み合わせて、結核菌を死滅させます。

副作用には、肝臓障害、腎(じん)障害、聴力障害、めまいなどがあります。

全身が衰弱して、栄養状態が悪い時は、腸管の安静のために絶食とし、点滴注射によって栄養を補給します。腸に狭窄、穿孔、閉塞(へいそく)が起こった時や、大きなしこりができたような場合には、手術を行うこともあります。

抗結核剤による治療は半年以上かかりますが、中途半端な治療は結核菌の薬剤耐性のもととなり、その後の治療を難しくします。中断せず、治療を継続するようにします。

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