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前縦靱帯骨化症
脊椎椎体の前面を上下に連結し、脊椎を縦走する前縦靭帯が骨化する疾患
前縦靱帯骨化症(ぜんじゅうじんたいこっかしょう)とは、脊椎(せきつい)を構成する椎体と呼ばれる四角い骨の前面を上下に連結し、脊椎を縦走する前縦靭帯が骨化する疾患。フォレステイル病、強直性脊椎肥厚症と呼ばれることもあります。
背骨、すなわち脊椎の骨と骨の間は、靭帯で補強されています。椎体の前面に位置する前縦靱帯は、後縦靭帯という椎体の後面に位置し、脊髄の通り道である脊柱管の前面に位置する靭帯と対をなして、骨に適度な動きと安定性をもたらしています。
この前縦靭帯が分厚くなって骨のように硬くなると、食道が圧迫されて物を飲み込みにくくなったり、声がかれたり、背中の張りや腰痛などが現れることがあります。
高齢者、特に60歳以上の男性に多く認められ、男性は女性の2〜3倍ほど発症しています。
前縦靱帯が骨化する原因は不明。何らかの遺伝性があるとする研究もいくつか報告されており、今後明らかにされると思われます。
前縦靱帯の骨化が起こると、脊椎の可動域が低下して運動が障害されることから、体が硬くなって動きが悪くなったと感じることが多いようです。
頸椎に前縦靱帯骨化が起こると、物を飲み込みにくくなる嚥下(えんげ)困難、声がかれる嗄声(させい)の症状が出現することがあります。胸椎や腰椎に前縦靱帯骨化が起こると、背中の張りや腰痛の症状が出現することがあります。
また、骨化が途切れて脊椎が動いている部位で、脊髄や脊髄から分枝する神経根が圧迫されて、手足の痛み、しびれ、まひなどをが出現することもあります。まれに、転倒などのけがにより、脊椎の骨折を生じたり、そのために脊髄のまひを生じることもあります。
前縦靱帯骨化症の検査と診断と治療
整形外科の医師による診断では、X線(レントゲン)検査を行い、前縦靭帯骨化を見付けます。X線検査で見付けることが困難な場合は、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などで精査します。CT検査は骨化の範囲や大きさを判断するのに有用で、MRI検査は脊髄の圧迫程度を判断するのに有用です。
嚥下障害を生じた場合は、X線による食道造影検査や咽頭(いんとう)部の内視鏡検査を行います。
整形外科の医師による治療では、背部痛、腰痛などを生じた場合は、鎮痛剤、筋弛緩(しかん)剤などの投与、理学療法、運動療法で対応します。
嚥下障害の改善がみられず誤嚥の恐れがある場合は、前縦靱帯骨化の部位を摘出して、その部位を自分の骨で固定する手術を行います。
脊髄や脊髄から分枝する神経根が進行性に圧迫されている場合も、前縦靱帯骨化の部位を摘出して、脊椎が動いている部位の圧迫を除去する手術を行います。
けがにより脊椎の骨折を生じた場合には、安静、ギプスやコルセットで治療し、骨がつかない、あるいは脊髄のまひが出現した際には金属で固定する手術を行います。
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