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石灰沈着性腱板炎
石灰化したカルシウムが肩腱板内に沈着することで炎症が生じ、肩の痛みが起こる疾患
石灰沈着性腱板(けんばん)炎とは、石灰化したカルシウムが肩腱板内に沈着することにより炎症が生じ、肩の痛みが起こる疾患。肩石灰沈着性腱炎、石灰沈着性腱炎、石灰性腱炎とも呼ばれます。
肩腱板は肩関節で上腕を保持している筋肉と腱の複合体であり、肩関節は肩甲骨と上腕骨で構成される関節です。
石灰沈着性腱板炎は、40歳代から60歳代の女性に多く発症します。肩を強く打つなどの思い当たる切っ掛けもなく、片側の肩の激しい痛みを突然、夜間などに覚えます。急激に痛みが増してきて、睡眠が妨げられるほどになります。また、肩の痛みのため可動域の制限がみられ、肩の挙上ができなくなります。
強い症状が発症後1~4週みられる急性型、中等度の症状が1~6カ月続く亜急性型、運動時痛などが6カ月以上続く慢性型があります。慢性型では、急性期の激痛が消失した後にも肩関節の硬さが残って、関節の可動域の低下を起こし、肩関節周囲炎(五十肩)と同じような状態になります。
石灰化したカルシウムはリン酸カルシウムの結晶で、その肩腱板内への沈着は、肩腱板の加齢による変性と、女性ホルモンの分泌減少の影響によって起こると考えられています。
体内のカルシウムは腸で吸収されて、骨を丈夫にするために使われ、不要な分のカルシウムは尿とともに排出されて、常に一定量が体内に残るようにバランスがとられています。しかし、女性では30歳代をピークに、徐々に骨量が落ちてきます。女性ホルモンの分泌減少に伴って、破骨細胞の働きが増し、骨の代謝のバランスが崩れて、骨からたくさんのカルシウムが血中に放出される結果です。
その放出されたカルシウムの多くは尿とともに体外に放出されますが、一部は腱や靭帯(じんたい)、血管壁に沈着していくことになります。腱の中に沈着する石灰化したカルシウムに対して、体は異物と認識して反応するために炎症が生じ、痛みが起こることになります。
石灰化したカルシウムは当初、濃厚なミルク状で、時がたつにつれ、練り歯磨き状、石膏(せっこう)状へと硬く変化していきます。石灰化したカルシウムがどんどんたまって、膨らんでくると、痛みが増してきます。そして、肩腱板から関節の周囲にある滑液包内に、石灰化したカルシウムが漏れ出す時に激痛となります。
石灰沈着性腱板炎の検査と診断と治療
整形外科の医師による診断では、肩の圧痛の部位や肩関節の動きの状態などを調べ、肩関節周囲炎(五十肩)の症状とよく似ているため、X線(レントゲン)撮影によって肩腱板部分に石灰化したカルシウムの沈着を確認することによって、石灰沈着性腱板炎と確定します。
石灰沈着の位置や大きさを調べるために、CT(コンピューター断層撮影)検査や超音波検査なども行います。肩腱板断裂の合併を調べるために、MRI(磁気共鳴画像)検査も行います。
整形外科の医師による治療では、急性例では、激痛を早く取るために、肩腱板に注射針を刺して沈着した石灰化部分を破り、ミルク状の石灰を吸引する方法がよく行われています。三角巾、アームスリング(腕つり)などで安静を図り、消炎鎮痛剤の内服、水溶性副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)と局所麻酔剤の滑液包内注射などが有効です。
一般に行われている治療法ではありませんが、胃潰瘍(かいよう)治療薬のシメチジンに、石灰を吸収し痛みを軽減する作用があるともされています。
ほとんどの場合、保存療法で軽快します。時間がたつとともに、滑液包内に漏れ出た石灰を自然に修復しようとする体の反応により、石灰化部分が小さくなってきます。このころには肩も動かせるようになり、日常でも支障のない程度まで回復します。しかし、完全に石灰化部分が修復されるまでには、2~3カ月かかります。
亜急性型、慢性型では、石灰沈着が石膏状に固くなり、時々強い痛みが再発することもあります。硬く膨らんだ石灰化部分が肩の運動時に周囲と接触し、炎症が消失せず痛みが続くこともあります。痛みが強く、肩の運動に支障がある場合、関節鏡視下による手術で石灰化部分を摘出することもあります。確実に摘出されると治療効果は速やかに認められ、ほとんどの場合1〜2週間以内に肩の挙上が可能となります。
肩の痛みが取れたら、ホットパック、入浴などによる温熱療法や、拘縮を予防したり筋肉を強化する運動療法などのリハビリを行います。
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