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脂腺母斑
生まれ付きまたは幼少時から、頭部から顔面にかけてできる黄色調のあざ
脂腺母斑(しせんぼはん)とは、生まれ付きまたは幼少時から、頭部から顔面にかけてできる黄色調のあざ。
原因は、皮膚の皮脂を分泌する脂腺の先天的な増殖です。成長とともに、あざに変化が見られます。
乳幼児期では、皮膚表面は正常ないし黄色調でざらざらした局面があり、平らから軽度の凹凸となります。頭部にできた場合は、毛髪を欠くことになります。
脂腺の発達する思春期以降では、次第に皮膚表面がいぼ状に隆起し、色調も加齢により褐色調を帯びてきます。頭部では、髪を洗った時に出血したり、散髪がしにくくなったりします。自然消退はなく、多くは単発性です。
ほかの母斑と同様に、体が大きくなるのに比例して脂腺母斑も大きくなります。注意することは、加齢とともに脂腺母斑から続発性に皮膚腫瘤(しゅりゅう)が発生することです。その頻度は、約20パーセントとされています。
続発性腫瘤には良性腫瘍と悪性腫瘍があり、母斑表面に変化が見られた時には注意が必要です。続発性腫瘤の発生年齢は平均30~35歳とされますが、まれに10歳以下のケースもあります。
従って、脂腺母斑は毛髪を欠いたり、盛り上がって汚いといった見た目ばかりでなく、皮膚がんなどになりやすいので比較的低年齢でも治療対象となります。
また、母斑が線状、帯状に並んでできる列序(れつじょ)性の脂腺母斑では、けいれん、精神遅延などの中枢神経障害を合併することがあります。これは脂腺母斑症候群と呼ばれ、目、口腔(こうくう)内、心血管系、骨などに先天異常を伴うので注意が必要です。
頭から顔面にできた黄色調の母斑を認めたらら、皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科に相談して下さい。予防的切除を行うのか、二次的に腫瘍ができてから切除を考えるのかなど、十分に相談して下さい。
脂腺母斑の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断は、特徴的な母斑なので、ほとんどは見ただけでつきます。
鑑別が必要な疾患には、頭の皮膚が一部欠損して生まれ、その跡が瘢痕(はんこん)になる先天性皮膚欠損症があります。出生直後は区別に迷うことがありますが、経過をみれば診断はつきます。
皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療は、加齢に伴い続発性腫瘤が発生するため、一般的には適当な時期に手術で母斑を切除します。
母斑の切除により生じた皮膚欠損が縫合可能な場合は、患部を縫い合わせます。皮膚欠損が広範囲な場合には、周囲の組織を利用する皮弁移植術や、ほかの部位から移植する植皮術が必要となります。
切除後には瘢痕が必ず残るため、露出している顔面では術後の傷跡を考えた切除、縫合方法が必要です。切除による傷跡を残さないために、エルビウムヤグレーザーや炭酸ガスレーザーなどの照射による剥削(はくさく)術を行う場合もあります。このレーザー治療の効果は、大きな個人差があるため、実際の本格的な照射を行う前に母斑の一部に試験照射を行い、適切なエネルギーを設定します。その治療効果を見た上で、全体の治療を行うかどうかを決めます。
頭部では、毛髪を欠いた部分を最小限にする手術方法が望ましく、最近ではティッシュ・エキスパンダー法(組織伸展法)という、皮膚の下にシリコン製のバッグを埋入し、そのバッグ内に生理的食塩水を少しずつ注入することによりバッグを大きくして、母斑周囲の頭皮や皮膚を拡張することで、手術後の毛髪を欠いた部分や瘢痕を最小限にする手術方法も用いられています。年齢、母斑の大きさ、手術方法によっては、全身麻酔が必要となります。成人では頭の皮膚の緊張度が高まり、わずかな幅を切除しても縫合が困難なこともあり、大きな傷ができる可能性があります。これに対し小児期では皮膚が軟らかく、十分縫合できるので、結果として小さな傷ですむ傾向があります。
脂腺母斑の完全な切除により、続発性腫瘤の発生はみられなくなります。
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