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静脈奇形
誕生時から皮膚の下に腫瘤がみられる、先天性の血管形成異常
静脈奇形とは、誕生時から皮膚の下に腫瘤(しゅりゅう)がみられる、先天性の血管形成異常。海綿状血管腫とも呼ばれます。
皮膚の表面は正常な皮膚色や、薄い紫紅色、薄い青色を示し、皮膚の下の腫瘤は内部に血液を含んでいるため、スポンジ状に軟らかくなっています。皮膚の表面に、数珠状に拡張した静脈が観察されることもあります。これは皮膚の深層で、静脈を中心とした奇形性血管が増殖して、塊となっていることが原因で発生します。
腫瘤は手足を始めとして体のどの部位にでも生じ、形は大小さまざま。皮膚の下に発生していることが多いのですが、筋肉や肝臓、腎(じん)臓、脳など深部にまたがって発生していることもあります。非常に広範な病変である場合は、生命にかかわる重篤な症状を示すこともあります。
皮膚の下に発生する多くの静脈奇形は、症状も軽微であり、長期に渡って安定しています。自然に消失することはありませんが、圧痛は認められません。
進行した場合は、血管が徐々に増大して周辺組織を圧迫したり、神経の圧迫による疼痛(とうつう)、血栓形成による疼痛を引き起こすことがあります。血管自体ももろくなるので、外傷によって破裂して大量出血を引き起こしたり、皮膚潰瘍(かいよう)、感染症などを引き起こすことがあります。また、大きな腫瘤では美容上および機能的に問題となります。
腫瘤が筋肉に発生している場合は、小児期よりも少し大きくなってから、痛みなどで気が付くことも多くなります。しかし、痛みがない場合もあり、疾患に全く気が付かないこともあります。
深部の静脈奇形では、静脈石を伴うことがあります。静脈石は局所で凝固系の異常があったり、血流が滞ることにより血栓が石灰化したもので、一度できると消失することはなく、疼痛やまひを引き起こします。小児の場合は、脚の長さに差が出ることがあり、多くは腫瘤のある脚のほうが長くなります。広範な病変がある場合では、体全体の血液凝固の異常が起きることもあります。
静脈奇形は手足に好発するため、基本的な受診科は皮膚科や皮膚泌尿器科、形成外科となるものの、発生した臓器によって受診科は異なります。耳や鼻、口であれば形成外科でも診療されますが、肝臓であれば消化器外科、腎臓なら泌尿器科、脳なら脳神経外科となります。
静脈奇形の検査と診断と治療
皮膚科や形成外科などの医師による診断では、皮膚の色の変化、数珠状に拡張した静脈などでわかることもあります。病変の確認のために、超音波検査、MRI、血管造影検査などの画像検査も行われます。
皮膚の下に発生する多くの静脈奇形は、うんだり、出血したり、疼痛があるといった症状がなければ経過観察で問題ありません。深部の静脈奇形も、ある程度以上は大きくならないので、放置して経過観察をするのが基本となります。
症状を伴う場合は、放射線治療やレーザー治療に効果が認められないため、外科的に血管を切除する方法がとられます。また、近年では、血管内治療である硬化療法、塞栓(そくせん)硬化療法も多く行われるようになっています。硬化療法は、奇形性血管に硬化剤という薬剤を注入して血管を固める方法です。塞栓硬化療法は、まず塞栓子と呼ばれる物質を用いて奇形性血管へ流入する血管を詰め、その後、奇形性血管に硬化剤を注入して血管を固める方法です。
なお、血栓形成による疼痛には非ステロイド性抗炎症薬、血栓予防には抗血小板薬が処方されることがあり、保存的治療にはサポーターなどによる圧迫が用いられことがあります。
病変が広範な場合は、手術が不可能なこともあり、現在でも治療は困難です。
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