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糸状虫症

線虫類の糸状虫の寄生によって引き起こされる寄生虫病

糸状虫(しじょうちゅう)症とは、線虫類のうち、糸のように細く白い種類の糸状虫(フィラリア)が寄生して、引き起こされる寄生虫病。フィラリア症とも呼ばれます。

かつては西日本を中心に日本国内でも発生した疾患で、今でもアフリカ大陸、アラビア半島南部、インド、東南アジアや東アジアの沿岸域、オセアニア、中南米と世界の熱帯、亜熱帯を中心に、糸状虫症の流行地が広がっています。推定感染人口は9000万人。

糸状虫の成虫が人のリンパ節、リンパ管に寄生し、人体内で生まれた幼虫(ミクロフィラリア)がアカイエカなどの蚊に吸われ、その蚊が吸血する時に他の人の体に入ります。人にはバンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、チモール糸状虫などが感染し、今日の日本では、犬に感染する犬糸状虫がよく知られています。ごくまれには、犬糸状虫が人に感染することもあります。

しばらくは無症状ですが、感染後9カ月ほどで発熱、リンパ管炎、リンパ節炎などの反応性炎症が現れ、数週、数カ月ごとに反応性炎症が繰り返されるようになります。その後、通常は数年を要して、四肢、生殖器、乳房にリンパ管の閉塞(へいそく)が起こると、下肢の皮膚が硬く肥厚する象皮(ぞうひ)病、男性の陰嚢(いんのう)にリンパ液がたまって大きくはれ上がる陰嚢水腫(すいしゅ)が現れます。

また、リンパ管と尿管がつながって、尿の中に食事から吸収した脂肪分が出て乳白色を呈する乳糜(にゅうび)尿などが現れることもあります。

糸状虫症の検査と診断と治療

糸状虫症(フィラリア症)の流行地から一時帰国時、あるいは帰国後の健康診断で、著しい好酸球増多が認められる場合、本症を疑い医療機関を受診し、検査を受ける必要があります。糸状虫症の経験のある医師は国内には少なくなっているので、まず大学の医学部などに問い合わせてみるのがよいでしょう。

医師による診断では、症状とともに、夜間の血液中の幼虫(ミクロフィラリア)の検出が重要です。昼間は肺の毛細血管に潜んでいる幼虫が、夜10時ごろになると末梢(まっしょう)血管に現れる定期出現性を有しているためです。近年は優れた診断キットがあり、時間帯に関係なく少量の採血で診断できます。

治療では、スパトニン(成分はクエン酸ジエチルカルバマジン)、ストロメクトール(成分はイベルメクチン)などの駆虫剤の投与が行われます。感染の副産物としての心不全などに対処するために、血管拡張剤や血圧降下剤が投与されることもあります。感染早期なら薬物治療が有効なものの、象皮病などの症状が出現した時点では無効。

心臓などに寄生された場合は、外科手術で糸状虫の成虫を物理的に取り除く方法がとられることもあります。成虫はオスが4cm、メスが8cmで、寿命は4~5年と考えられています。

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