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再生不良性貧血
貧血の中で最も治りにくく、いわゆる難病に指定されている疾患
再生不良性貧血は、骨髄にある血液細胞の源に当たる造血幹細胞が何らかの原因によって減るために、赤血球、白血球、血小板のすべての血球が減る疾患。
貧血の中で最も治りにくいために、厚生労働省は1972年に特定疾患、いわゆる難病に指定しました。日本の患者数はそれほど多くはなく推定で5000~6000人とされますが、諸外国に比べると日本での有病率は世界で最も高いといわれています。年齢別でみると、20歳代と50~60歳代に発症のピークがあります。
赤血球だけが減少する他の貧血と異なり、再生不良性貧血ではすべての血球が減少するのが特徴です。すべての血球は骨髄で造血幹細胞が盛んに分裂、増殖を繰り返し、そこにさまざまな造血因子が働き掛けることで、あるものは赤血球に、あるものは白血球に、またあるものは血小板へと姿を変えていきます。この血球分化の源である造血幹細胞が障害を受けてしまうと、いずれの血球も作られなくなるのです。
鉄欠乏性貧血は欠乏している鉄、悪性貧血は欠乏しているビタミンB12や葉酸を補充することで治りますが、再生不良性貧血はそういうわけにはいかず、これが難病に指定された理由でもあります。
再生不良性貧血は血球全体が減少するので、他の貧血のように赤血球だけが減少するものと症状の出方が異なります。赤血球が減少すると、動悸(どうき)や息切れ、めまい、立ちくらみ、頭痛などの貧血症状が現れ、顔面が蒼白(そうはく)になります。白血球、特に好中球が減少すると、細菌に対する防御力が低下し、感染症に掛かりやすくなり発熱も続きます。血小板が減少すると、出血しやすくなり、鼻や歯肉、泌尿器、性器、消化管からの出血のほか、皮下に紫斑(しはん)が現れることがあります。
この再生不良性貧血の80パーセント以上は誘因が不明ですが、一部は抗生剤や鎮痛薬などの薬物投与、ウイルス感染、原因不明の肝炎などが引き金になって、造血幹細胞自体の異常や造血幹細胞に対する免疫反応が誘導され、造血幹細胞が分裂、増殖できなくなるために、発症すると考えられています。
医師による診断では、すべての血球が減少していることを確認すると同時に、針を刺して採取する骨髄穿刺(せんし)によって骨髄の細胞密度が低いことを確認します。一般に測定される血液細胞は赤血球、白血球、血小板の3つですが、骨髄の働きを評価する場合には、網状赤血球という未熟な赤血球の数を調べる必要もあります。
骨髄を検査できる骨は、胸骨という胸の中心に位置する骨と、腸骨という骨盤の骨に限られています。全身の骨髄の状態を評価するためには、MRI(磁気共鳴画像)検査を行う必要があります。この検査の結果、胸部や腰部の脊椎(せきつい)骨の骨髄細胞密度が低ければ、再生不良性貧血の診断は確実になります。
再生不良性貧血との区別が特に難しいのは、骨髄異形成症候群のうち、骨髄中の芽球という幼弱な細胞の割合が5パーセント未満の不応性貧血です。不応性貧血では細胞の形に異常がみられますが、再生不良性貧血でも軽度の異常がみられるため、その区別には高度の専門的な判断が必要です。
再生不良性貧血に対する治療の二本柱は、免疫抑制療法と、HLA(ヒト白血球抗原)が一致する血縁ドナーからの同種骨髄移植です。45歳以下の発症者でHLAの一致する血縁ドナーが得られる場合には、一般に同種骨髄移植が適しています。45歳以上の発症者では、移植に伴う合併症のために生存率が低下するので、免疫抑制療法が第一選択の治療と見なされます。
抗ヒト胸腺(きょうせん)細胞免疫グロブリン(ATG)やシクロスポリン(CSA)などの免疫抑制剤を内服する、最新の免疫抑制療法を用いれば、年齢を問わず80~90パーセントの長期生存率が得られます。ただし、免疫抑制療法後の長期生存者の中に、骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病へ移行する例が10~15パーセント存在するため、20歳以下の発症者では一般に骨髄移植療法が優先されます。
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