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先天性気管狭窄症
生まれ付き、空気の出し入れを行う気管が細い疾患
先天性気管狭窄(きょうさく)症とは、のどから肺までの気管が生まれ付き細い疾患。医学が進歩した現在でも、治すことが難しい疾患の1つに挙げられています。
気管は、空気の出し入れを行う道に相当します。正常な気管は全周の80パーセントの気管軟骨と20パーセントの膜様部と呼ばれる薄い膜でできていますが、この疾患の大部分は膜が欠如していて、軟骨が気管の全周を占めています。これは、気管軟骨の形成異常のために生じると考えられています。
正常な気管は首を動かしても軟骨の輪をつないでいる膜様部が自由に伸び縮みして、空気の出し入れが妨げられることはありません。また、大きな呼吸をすると膜様部が伸びて気管の内腔(ないくう)を大きく開き、空気の出し入れを容易にします。先天性気管狭窄症では、これらの働きが大なり小なり障害されます。
気管の狭窄の程度や、狭窄の長さ、また狭窄が起きる気管の部位によって、疾患の発生時期や重症度が変わってきます。内腔が極端に細い場合には、生まれて間もなく生じる呼吸困難のために発見されます。内腔が半分くらいある場合には、1歳をすぎてから見付かることもあります。狭窄の程度が軽度である場合には、無症状に推移することもあります。
多くの場合は、生後1〜2カ月頃から呼吸困難や、呼吸時のゼーゼー、ヒューヒューという喘鳴(ぜんめい)音が発生し、時には突然呼吸困難に陥り、気管内にチューブを入れようとして入らないために生後比較的早い時期に見付かります。
狭窄の形と狭窄の長さはさまざまで 、狭窄の長さは気管の20~30パーセント程度から、気管全体が細い場合もあります。狭窄の長さが長いほど、狭窄の部位が気管の下にあるほど、疾患の程度は重いと考えられています。
気管支の分岐に異常を起こす気管気管支炎を合併していたり、肺動脈による血管輪症を合併することも多く、先天性心疾患の合併も多くみられます。かつては数万人に一人のまれな疾患と考えられていましたが、診断法の進歩や疾患に対する理解から、以前より多い頻度で発見されるようになっています。
先天性気管狭窄症の検査と診断と治療
医師による診断では、胸部単純撮影、MRI、3次元CT(3DCT)、硬性気管支鏡検査、並びに気管支造影が行われます。硬性気管支鏡検査は、狭窄起始部の同定、狭窄の範囲、末梢(まっしょう)気管支の状態の検索のために必須です。他の疾患を合併している場合には、他の検査も行われます。
保存的な治療としては、狭窄の程度が軽く、呼吸症状が軽度な場合に、去たん剤、気管支拡張剤、抗生物質を投与し、経過観察します。成長とともに狭窄部気管が拡大し、症状が軽減していくこともあります。しかし、気道感染などを切っ掛けに、急激に症状が悪化することもあります。
外科的な治療としては、気管の狭窄の長さがごく限られている場合には、細い気管を切除し、上下の気管を縫い合わせます。狭窄が長い場合は、さまざまな気管形成術が行われています。まず、狭窄部の気管前壁を縦に切開し、切開部に肋(ろく)軟骨、骨膜、心膜などの自家グラフトを当て、内腔を拡大する方法があります。気管後壁を縦に切開し食道壁を用いて拡大する方法や、内視鏡下に狭窄部をバルーン拡張したり、その後にステントを留置して拡大を図る方法もあります。
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