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化膿性腱鞘炎

指のけがなどにより細菌が侵入し、腱や腱鞘にも炎症が広がった病態

化膿(かのう)性腱鞘(けんしょう)炎とは、指のけがなどにより細菌が侵入し、腱や腱鞘にも炎症が広がった病態。

筋肉を骨に結び付けている腱の外囲を筒状に包む組織が腱鞘で、腱鞘の中には滑液という油のようなものがあって、ひも状の組織である腱がスムーズに動くようにしています。

例えば、転んで指をけがして傷口をしっかり消毒しなかった際に、傷口から黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌、緑膿菌などの化膿菌が入り込むことがあります。続いて、傷口を中心に炎症が広がり、腱や腱鞘にも炎症が達すると化膿性腱鞘炎を発症します。

化膿性爪囲炎(ひょうそ)などの手指の感染巣を介して、細菌が侵入して化膿性腱鞘炎を発症する場合もあります。

けがの部位によってどの腱鞘でも起こる可能性がありますが、手の指に最も頻度が高くみられ、手首、ひじ、ひざ、足首に発症することもあります。

手の指が化膿性腱鞘炎になると、手の指から手のはれ、痛み、発赤がみられます。屈筋腱の化膿性腱鞘炎では、指の関節が軽度に曲がった状態になり、無理に指を伸ばそうとすれば、痛みが増強します。手の指の屈筋腱は、母指は1本ですが、他の指には深指(しんし)屈筋腱と浅指(せんし)屈筋腱の2本があります。また、手のひらを押さえるだけでも、痛みを伴います。

腱鞘炎は関節の使いすぎや、加齢、関節リウマチが原因となっても発症しますが、これらの腱鞘炎と違って、化膿性腱鞘炎は進行状態が比較的早いのが特徴です。

人差し指、中指、薬指の腱鞘は、指の根元までつながっていますから、一度これらの腱鞘に化膿が及ぶと、指の根元まで進んでしまうことがあります。親指と小指の腱鞘は、さらに手首まで伸びていますので、化膿が手首から前腕まで進むこともあります。指を曲げ伸ばした際に、ひじなどにまで圧迫感を感じるようになることもあります。

腱鞘の中では膿(うみ)が腱を囲んでいますから、腱の組織が死ぬ壊死(えし)に陥ったり、穴ができて壊死した腱を排出することもあります。

初期の段階の痛みを放っておくと、指関節炎、手関節炎を併発し、機能障害を悪化させることになります。悪化すると、悪寒、発熱などの全身症状も出現します。

化膿性腱鞘炎で指がはれて痛いという場合には、なるべく早く整形外科の医師を受診し、適切な処置をしてもらうことが大切です。

化膿性腱鞘炎の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、原因菌を検出することが決め手になるので、細菌培養を行います。また、黄色の膿は黄色ブドウ球菌、緑色の膿は緑膿菌など、膿の性状は原因菌を推測する上で参考になります。

整形外科の医師による治療は、飲み薬では効かないので、原因菌に応じた抗生物質の点滴によって行われ、手の安静を保ちます。集中的に行ったほうが効果が上がりますので、何日間か連続で点滴することになります。痛みが特に強い場合は、痛み止めを併用します。

あまりにも炎症がひどい場合、抗生物質の効果が疑わしい場合は、早期に手術することになります。化膿している部位の腱鞘を切開して、滑膜を切除し、たまっている膿を排出して腱の周囲を洗浄します。処置が遅れると炎症が広範囲に波及し、指の機能に障害を残す可能性があります。

手術を受けた後は、消毒、包帯をして安静にします。経過がよければ、2~3週間で治ります。

化膿性腱鞘炎にならないためには、けがをしたら必ず消毒をして、傷口を清潔に保つことを心掛けることです。

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