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月状骨軟化症

手首を構成する骨の一つである月状骨が壊死する疾患

月状(げつじょう)骨軟化症とは、手首を構成する8個の骨の一つである骨に、血流障害による壊死が起こる疾患。キーンベック病とも呼ばれます。

1910年、キーンベックによって初めて報告されました。月状骨は、手首(手関節)を構成する8個の小石のような骨(手根骨)のほぼ中央に位置します。つまり、周囲がほぼ軟骨に囲まれていて血行が乏しいために、血流障害に陥って壊死を起こしやすく、つぶれて偏平化します。体の中で、このような血流障害による壊死を起こしやすい部位は、ほかに大腿(だいたい)骨頭が挙げられます。

月状骨軟化症はバドミントン、テニスなどの手首をよく使うスポーツで発症することが多く、捻挫(ねんざ)や打撲などの軽微な外傷を切っ掛けに発症することもあります。職業的には工員、大工、農漁業など手をよく使う20、30歳代の男性に多く発症します。明らかな外傷や職歴のない女性、高齢者に発症することもあります。

何らかの原因で月状骨への血行が絶たれて発症すると考えられていますが、根本的な原因は不明です。

一説には、手首の使いすぎ、軽微な外傷の繰り返しなどが月状骨に損傷を起こし、血行障害に陥った骨では修復能力が乏しいため、次第に偏平化を引き起こすと考えられています。また、肘(ひじ)と手の間に位置する前腕に2本ある骨、橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)の長さのバランスの違いにより、手関節内の月状骨にかかる圧力が強くなる場合に、発症しやすいと考えられています。

主な症状は、手首を動かしたり力を入れた時の痛みや、はれ、握力の低下、手首の動きの制限。壊死が進行すると、痛みのために手関節の変形性関節症の状態になり、日常生活で多大な不自由を生じるようになります。

10歳代前半で発症した場合などは自然治癒も期待できますが、成人では完全な治癒は期待しにくく、壊死が進みます。しかし、手首の使いすぎを抑えるとともに、痛みが落ち着いてくることもあります。

整形外科の医師による診断では、X線検査で月状骨に輝度変化が生じていたり、硬化像、偏平化が認められれば確定できます。MRI検査をすれば、より詳しい状況がわかります。

治療法は、症状、年齢などによって変わります。初期や痛みが強い時には、ギプス、装具などで固定を行い、しばらく安静にします。治らない時には、進行度などに応じていろいろな手術が行われます。月状骨にかかる力を減らして痛みを緩和するために橈骨短縮骨切り術や、部分手関節固定術が行われたり、手首のそばから血管や、血管をつけた骨を月状骨内に移植する方法なども行われます。

末期では、壊死した月状骨を隣の舟状骨、三角骨とともに切除する近位手根列切除術などが行われます。変形性関節症が生じた場合は、手首が動かないように固める全手関節固定術などが行われます。

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