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肝吸虫症
肝吸虫の寄生によって引き起こされる寄生虫病
肝吸虫症とは、肝吸虫のメタセルカリアが寄生しているコイ、フナ、モツゴなどの淡水魚を刺身、または加熱処理が不十分な状態で食べて、引き起こされる寄生虫病。
肝吸虫は、朝鮮半島、日本列島、台湾、中国南部など極東に広く生息し、東南アジアのベトナムにも生息しています。日本では、八郎潟、利根川流域、琵琶湖湖畔、岡山県の児島湾沿岸、四国の吉野川流域、九州の筑後川流域などに広く生息しています。
淡水魚を刺身や加熱処理が不十分な状態で人が摂食すると、メタセルカリアは人の腸管で幼虫となり、逆行して肝臓内の胆管や胆嚢(たんのう)に至り、約1カ月で成虫となります。 成虫は雌雄同体で、平たい柳の葉のような形をしており、体長10~20ミリ、体幅3~5ミリで、20年以上生存することができます。
この成虫は寄生している胆管内などで、1日に約7000個の虫卵を産みます。虫卵は胆汁とともに十二指腸に流出、最終的に糞便(ふんべん)とともに水中に流出しても、孵化(ふか)しません。第1中間宿主(しゅくしゅ)で、湖沼や低湿地に生息する巻貝の一種、マメタニシに摂食されると、消化管内で孵化してセルカリアに成長、さらに第2中間宿主の淡水魚に入り、メタセルカリアに成長します。第2中間宿主となる淡水魚は、コイ科を中心にコイ、フナ、ウグイ、モツゴ、ホンモロコ、タモロコ、タナゴなど約80種を数えます。
軽症の肝吸虫症では通常、無症状に経過します。重症の肝吸虫症になると、腹部不快感、食欲不振、発熱、悪寒、上腹部痛、圧痛を伴う肝腫大(しゅだい)、下痢、軽度の黄疸(おうだん)、および好酸球増加が起こります。慢性に経過すると、胆管炎が肝実質の委縮、門脈線維症、肝硬変に進行することもあり、多量の肝吸虫が胆道を閉塞(へいそく)すると、黄疸が起こります。その他の合併症として、化膿(かのう)性胆管炎、慢性膵(すい)炎、胆管がんが起こることもあります。
肝吸虫症の検査と診断と治療
日本での肝吸虫症はほとんどが軽症ですが、重症の肝吸虫症に気付いた際には、内科、消化器科の専門医を受診します。
医師による診断では、逆行性膵胆管造影、CT、エコーなどで検査すると、胆管の拡張、肥厚像や異常が認められます。糞便あるいは胆汁中から虫卵が検出されれば診断が確定しますが、肝吸虫特異抗体を検出する免疫血清学的診断も有用です。血液生化学検査では、好酸球増多、トランスアミナーゼ、ビリルビンの上昇がみられることがあります。
治療は、吸虫駆除剤のプラジカンテル、またはアルベンダゾールの経口内服で行われます。古くは塩酸エメチン、クロロキン、ジチアザニン、ヘキサクロロフォン、ヘトール、ビレボンなど副作用の強い薬を用いざるを得ませんでしたが、1980年代以降はプラジカンテルの登場によって、1日3回の経口内服のみで根治が可能になりました。アルベンダゾールでは、1日1回、7日間の経口内服で根治します。
胆管が閉塞した場合は、手術を要することがあります。
予防法としては、流行地の河川や湖の淡水魚は十分に加熱調理して食べることに尽き、刺身、酢漬け、ワイン漬けで食べないことです。モツゴやホンモロコ、タナゴ類のような小型のコイ科魚類を流行地で生食するのが最も危険で、コイやフナはモツゴなどに比べるとメタセルカリアの保虫率ははるかに低いものの、刺身などにして生で食べる機会が多いため、用心しなければなりません。
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