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急性出血性腸炎

抗生物質の投与後に、激しい腹痛と血性下痢が発生

急性出血性腸炎とは、何らかの疾患のために抗生物質を投与されている人に現れる急性腸炎。急性出血性大腸炎とも呼ばれます。

高齢者よりも若年者から中年者に多くみられ、風邪などの治療のためにペニシリン系抗生物質を投与された3~4日後に突然、激しい腹痛と血性下痢に見舞われます。血液の混じった下痢が頻回に渡って現れ、ちょうどトマトジュースのように見える便が出ます。 ただ、大腸のびらんの程度が低い場合では、下痢ないし軟便で下血を伴わないこともあり、腹痛も軽微なことがあります。

合成ペニシリンが主な起因薬剤とされていますが、セフェム系や他の抗生物質も誘因となり得ます。抗生物質のほか、非ステロイド性消炎鎮痛剤、抗がん剤、免疫抑制剤、重金属製剤、経口避妊剤などの薬剤も誘因となることがあります。

急性出血性腸炎のメカニズムはいまだに解明されていませんが、疾患に対する治療を目的に投与されたペニシリン系抗生物質が、その目的に反する副作用として何らかのアレルギー反応を引き起こし、大腸の血流を障害してびらんや潰瘍(かいよう)などの炎症を引き起こし、腹痛、下痢、下血を起こすと見なされています。

抗生物質は微生物を原料にして作られた薬剤で、副作用は少ないのですが、人によってはアレルギー反応が起きたり、発疹(はっしん)、のどの渇き、めまいなどの症状が現れることもあります。

急性出血性腸炎の検査と診断と治療

何か薬剤を服用している期間中に、思い当たる原因もなく下痢が続くような症状が現れたら、内科、消化器科、胃腸科の担当医に相談します。

医師による診断では、まず、抗生物質の投与歴を確認します。あれば、抗生物質の内容も確認します。投与経路では、経口投与の場合が多いようです。

次いで、大腸内視鏡検査を行うと、横行結腸を中心にS状結腸から結腸の粘膜に発赤、びらんが認められ、潰瘍が認められることもあります。血液検査では、白血球の増加などを認めるものの特徴的ではありません。糞便検査では、クレブシエラ・オキシトカ菌が高率に検出されます。この菌の毒素産生は認められませんが、何らかの関与が考えられています。

抗生物質が原因となった急性出血性腸炎は、その抗生物質を中止することが第一の治療法です。脱水を認めれば、輸液を行います。下痢がひどい場合も、腸の安静を保つために、点滴による栄養の補給を行います。その他症状に応じて、腸の動きを抑えて、痛みを和らげる作用のある鎮痙(ちんけい)剤、腸内細菌のバランスを整える整腸剤などの投与を行います。これらの対症療法だけで急速に症状が改善し、2~4週間ぐらいで治癒します。

ただし、薬剤が原因であると考えられる場合でも、自分だけの判断で服用を中止せず、担当の医師の指示に従うことが大切です。原因となる薬剤は、一般にペニシリン系抗生物質が多いもの、他の抗生物質や消炎鎮痛剤などでも起こることがあるからです。

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