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RSウイルス感染症

RSウイルスによる乳幼児の代表的な呼吸器感染症

RSウイルス感染症とは、RSウイルス(RSV:Respiratory Syncytial Virus)による乳幼児の代表的な呼吸器感染症。RSウイルスは呼吸器合胞体ウイルスともいわれ、風邪の原因となる一般的なウイルスの一つです。

毎年、秋から冬にかけての長い期間に渡って流行し、12~1月がピークとされてきましたが、近年は7、8月に感染するケースも増えています。RSウイルスは乳幼児が最も感染しやすいウイルスで、1歳の誕生日までに70パーセントの乳児が初感染し、2歳までにはほとんどの乳幼児が感染するとされます。

麻しん(はしか)や流行性耳下腺(じかせん)炎(おたふく風邪)とは異なり、一度感染しただけでは感染防御免疫が不十分で何度も発症しますが、通常は再感染のたびに症状は軽くなっていきます。

健康な乳幼児がRSウイルスに感染した場合、4~5日の潜伏期の後、38~39度程度の発熱、鼻水、せきなどの上気道症状が出て、多くは8~15日ぐらいで治まります。発熱症状がないこともあります。

しかし、感染した乳幼児の3割程度は、上気道症状が出た後、炎症が下気道まで波及して、気管支炎や細気管支炎を発症し、せきの増強、呼吸時にゼーゼーというような音がする喘鳴(ぜんめい)、多呼吸などが現れてきます。

1~3パーセントは重症化し、入院治療が必要となります。RSウイルスは何度も感染し、悪化すると肺炎などを起こし、最悪の場合は死に至ることもあるからです。特に重症化しやすいのは、生後6カ月以内の乳児や早産児、慢性肺疾患や先天性心疾患などの基礎疾患を持っている乳幼児とされます。さらに、生後4週未満では、突然死(乳幼児突然死症候群)につながる無呼吸が起きやすく、注意が必要です。

幼い頃にRSウイルス感染症が重症化し、細気管支炎などの下気道感染症になった場合は、長期に渡って喘鳴を繰り返しやすく、ぜんそくになるリスクも高くなります。

とりわ冬季に乳児が鼻汁、せきに引き続いてゼーゼーしてきたような場合には、その30~40パーセントがRSウイルス感染症によると考えられますので、小児科、ないし呼吸器科の専門医を受診します。

RSウイルス感染症の検査と診断と治療

小児科、ないし呼吸器科の医師による診断は、ウイルス分離、ウイルス抗原の検出、ウイルスRNAの検出、血清抗体価の上昇などの検査結果から、RSウイルス感染症と確定します。鼻汁材料を用いたRSウイルスの抗原検出キットの登場以降、迅速なウイルス抗原検査が急速に普及しています。なお、抗原検出キットは市販されてもいます。

医師による治療では、対症療法が主体になります。発熱に対しては冷却とともに、アセトアミノフェン(カロナール)などの解熱剤を用います。喘鳴を伴う呼吸器症状に対しては鎮咳去痰(ちんがいきょたん)剤や気管支拡張剤などを用います。

脱水気味になると、喀痰(かくたん)が粘って吐き出すのが困難になるので、水分の補給に努めます。細菌感染の合併が疑われる場合は、抗生剤を使用します。

重症化を防ぐ手段としては、シナジス(パリビズマブ)という抗体製剤の注射による投与がありますが、100ミリグラムで約15万円と費用が高いのがネック。ただし、29~35週の早産で6カ月以下の新生児や乳児などは健康保険が適用され、重症化のリスクが高い早産児には投与が勧められます。

RSウイルスは一度感染しても持続的な免疫ができにくく、予防ワクチンや特効薬もないのが現状。このため、RSウイルスに感染しないよう、手洗い、うがいを徹底し、接触感染を防ぐため流行期に子供が集まる場所になるべく行かないなど、ふだんの生活で対策を取ることが重要になります。

RSウイルスは、せっけん、消毒用アルコール、次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系消毒薬などに触れると容易に感染力を失います。一方、目や鼻粘膜からも感染すると考えられていて、通常の鼻と口を覆うマスクでは効果はないとされています。

また、母親が母乳で育てることや、妊娠中は魚やキノコなどに多く含まれるビタミンDを積極的に摂取することも、乳幼児の重症化を防ぐ対策として有効です。

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