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遺伝性視神経症
遺伝的欠陥に起因して、視力障害を起こす疾患
遺伝性視神経症とは、遺伝的欠陥に起因して、視力障害を起こす疾患。種々のものがあり、いずれもまれで、難治な疾患です。
比較的多いものとしては、レ一ベル病と優性遺伝性若年性視神経委縮症があります。
まず、レーベル病は、片目また両目の比較的急激な視カ低下で始まる遺伝性視神経症の一つ。レーベル遺伝性視神経症とも呼ばれます。
主として、青年から中年の男性に多くみられます。母系遺伝を示す遺伝病であり、ミトコンドリアDNAの塩基配列に点突然変異が起こり、酸化的リン酸化効率の低下により、同一家系内で発症することがあります。誘因として、多量のアルコールや、たばこの摂取、糖尿病、頭部外傷などの環境因子が関与します。特発性視神経炎が発症の契機となることもあります。
症状としては、片目また両目に、急性または亜急性の視力低下が起こり、視野の中心部分が欠ける中心暗点を伴います。その後、数カ月の間に、眼底にある視神経乳頭の耳側より委縮が徐々に始まり、1年以内に視神経全体が委縮に至ります。最終的には、視野の中心部分が強く欠ける中心暗点となって、多くの場合は視力は0・1以下となります。
次に、優性遺伝性若年性視神経委縮症は、常染色体優性遺伝性の形で遺伝し、10歳未満で発症する遺伝性視神経症の一つ。常染色体優性遺伝性視神経委縮、若年性家族性視神経委縮とも呼ばれます。
遺伝性視神経症の中では最も多いと考えられており、有病率は1万人から5万人に1人の割合とされています。
日本で確認された家系数は少なく、男女差はないとされます。遺伝性ですが、必ずしも同一家系内に類似した症状の発症者がみられるとは限りません。
発症の初期には、早発の視神経の変性により両眼の視力障害が生じます。中心視カの低下のほかに中心視野が侵されるために、第3色覚異常様の色覚異常を示し、青と黄と灰色が同じに見える青黄色盲の症状を生じます。網膜の変化は少なく、視カ低下は緩やかに進行し、多くのケースでは0・2〜0・3以上の視カを保持します。
しかし、やがて視力の回復を十分に示さぬまま、視神経が委縮を強めていきます。網膜の神経線維が集まっている視神経乳頭は、耳側から次第に退色して蒼白(そうはく)となり、血管が見られないのが特徴です。
通常、晩年に至るまで視力低下は軽度ですが、高齢になると視力低下がさらに進行するケースもあります。
ほとんどの発症者は神経症状を合併しないものの、時には、自分の意思とは関係なく眼球が動く眼振(がんしん)、及び難聴を合併する場合もあります。
遺伝性視神経症の検査と診断と治療
まず、眼科の医師によるレーベル病の診断では、蛍光眼底造影、視力検査、視野検査、画像検査、電気生理学的検査、心電図検査、遺伝子検査が行われます。レーベル病の急性期では、通常両目に異常が認められ、視神経乳頭は発赤、腫張(しゅちょう)し、血管は著しく拡張しています。委縮期では、視神経乳頭の耳側の蒼白化が進行し、血管の拡張は見られなくなります。
視神経乳頭の変異、比較的急激な視力低下、遺伝子解析による特異的なミトコンドリアDNAの変異が確認されれば、レーベル病と診断できます。
明らかな有効性が確認された治療法はないので、ビタミン剤、循環拡張剤などの処方が行われます。副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の投与もされていますが、多くの場合は無効です。コエンザイムQ剤の投与も試みられていますが、有効性が確認されているわけではありません。
西洋医学では視力回復が難しいとされていますが、東洋医学の鍼灸(しんきゅう)治療では、視力がかなり回復しているケースも報告されています。
生活上の注意点として、過度の喫煙、過度の飲酒を避けます。また、糖尿病や高血圧を合併した場合は、コントロールを十分によくすることが大切です。
次に、眼科の医師による優性遺伝性若年性視神経委縮症の診断では、蛍光眼底造影検査、視力検査、視野検査、画像検査、電気生理学的検査、心電図検査が行われます。確定診断のために、遺伝子検査が利用可能です。
眼科の医師による治療では、明らかな有効性が確認された治療法はないので、ビタミン剤、循環拡張剤などの処方が行われます。
色覚異常に関しても、遺伝子の変異であるため、明らかな有効性が確認された治療法はありません。
2002年までは学校健診で色覚検査が行われていたため、異常が見付かった人が色覚異常の確定診断のために眼科を訪れていました。しかし、確定診断に必要なアノマロスコープを装備する眼科は多くないため、実際は不十分な診断が行われて問題がありました。
2003年以降は、学校健診での色覚検査は廃止され、希望者のみが検査を受けるようになりました。検査で異常が出たら、専門の医療機関で遺伝子相談や職業適性についてのアドバイスを受けることが可能になっています。
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