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イタイイタイ病

重金属カドミウムの摂取で起きる慢性中毒病

イタイイタイ病とは、重金属カドミウムの摂取で起きる慢性中毒病。略してイ病とも呼ばれます。

1910年代から1970年代前半にかけて、富山県神通(じんづう)川流域の婦中町(現・富山市)などを中心に多発しました。神通川上流の岐阜県神岡町(現・飛騨市)の三井金属鉱業株式会社神岡鉱業所(神岡鉱山)から排出されたカドミウムが川に流れ、川水を灌漑(かんがい)用水に使用していた富山県の農地土壌が汚染されました。そこで産出された米などの農作物や飲料水を長年、摂取した主に中高年の出産経験のある女性多数が、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を伴う骨軟化症を発症。

当初は風土病といわれたものの、現地の開業医である萩野昇医師などの努力もあり、1955年(昭和30年)にカドミウムによる慢性中毒と判明しました。末期になると、体中の骨がちょっとしたショックでボキボキ折れるのが症状の特徴で、「痛い、痛い」という叫びがそのまま疾患名になりました。

その後の研究の結果、当時の厚生省も1968年(昭和43年)5月に慢性中毒と認め、「イタイイタイ病はカドミウムの慢性中毒により、まず腎臓(じんぞう)障害を生じ、次いで骨軟化症を来し、これに妊娠、授乳、内分泌の変調、老化および栄養としてのカルシウム等の不足などが誘因となって生じたもので、慢性中毒の原因物質としてのカドミウムは自然界に微量に存在するものを除き、神通川上流の三井金属神岡鉱業所の活動で排出されたもの以外、認められない」と見解を明らかにし、国内初の公害病と認定しました。

その後1971(昭和46年)年2月からは「公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法」が施行され、医療等の救済が行われてきました。1974(昭和49年)年9月からは「公害健康被害補償法」による医療救済等の措置が実施されています。

患者と遺族33人が訴えた損害賠償の訴訟では、一審、控訴審ともに原告が勝ち、三井金属鉱業側は死者に1200万円、患者に960万円を支払いました。

このイタイイタイ病の認定患者は2012年(平成24年)3月現在、196人。このうち生存者は、4人だけです。罹患(りかん)者は1000人以上と推定されていますが、1955年(昭和30年)以後は重症者はほとんどみられなくなり、近年、富山県神通川流域などでのイタイイタイ病の新たな発症は認められていません。

なお、イタイイタイ病患者は、石川県梯川(かけはしがわ)流域、兵庫県市川流域、長崎県対馬でも発見されていますが、国は認定していません。

イタイイタイ病の症状は腰痛、背痛から始まり、次第に股(こ)関節の痛みのため臀部(でんぶ)を振ってアヒルのような歩き方をするようになり、やがて歩行不能となります。また、ぶつかったり転んでも容易に四肢骨や肋骨(ろっこつ)に骨折を起こし、度重なるとタコの足のように四肢が屈曲してしまいます。体位を変えたり、談笑やせきなどによっても全身に痛みがくるようになると、昼夜を問わず「痛い、痛い」と訴え続け、ついには栄養失調やその他の合併症で死亡します。

骨の変化のほかに、腎臓の尿細管の機能も侵されるカドミウム腎症になり、尿中に蛋白(たんぱく)、糖、カルシウムが増加します。骨折しやすい理由の一つにカルシウムの体外排出が考えられ、多産婦に多発したのも、妊娠中にカルシウムが胎児に多く奪われることが誘因とみられています。

医師によるイタイイタイ病の治療では、骨軟化症についてはビタミンD2の大量投与や、活性型ビタミンD3の投与によりある程度症状は和らぐとされますが、金銭的余裕のある患者は少なかったと見なされます。また、この治療では尿細管の機能異常は改善されないため、骨軟化症がしばしば再発します。

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