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うっ滞性皮膚炎
下肢の血液循環が滞るために生じる慢性の皮膚疾患
うっ滞性皮膚炎とは、下肢の静脈の循環不全によって生じる慢性の皮膚疾患。うっ滞とは、血液などが正常に循環したり流れたりすることができずに、静脈内などに滞留した状態を指します。
特に中年以降の女性に多くみられ、静脈瘤(りゅう)や血栓性静脈炎など下肢の静脈の血行障害によって、膝(ひざ)下3分の1の部位に発症します。動静脈ろう、先天性静脈拡張症などの先天性疾患でも起こりますが、この場合は年少時より生じます。
遺伝的に静脈の弁が弱い体質に加えて、長期間の立ち仕事、肥満、加齢、出産などが誘因となって、膝下3分の1の部位に静脈瘤などができ、血液のうっ滞が生じます。この血液のうっ滞が慢性化すると、血管から皮膚への酸素や栄養の供給が不足し、皮膚炎や色素沈着などの症状が出ると考えられています。
長い時間立っていた日やよく歩いた日の夜に膝下がむくみ、翌朝には軽くなるという症状がまず現れます。むくみを繰り返していると、その部位の皮膚表面に光沢を帯びた湿疹(しっしん)ができ、内出血のために褐色の色素沈着が現れます。さらに変化が進むと、表面にかさぶたがついた楕円(だえん)形のかゆみのある紅斑(こうはん)がいくつも現れ、次第に大きくなってきます。
また、皮膚の細胞へ十分な血液循環が保たれなくなるため、皮膚が委縮したり、皮膚表面に軽いダメージを受けただけで容易に皮膚潰瘍(かいよう)を生じます。これらの皮膚炎の症状は、細菌感染が加わったり,外用薬や消毒薬が原因で接触皮膚炎を起こすと悪化することもあります。
膝下3分の1の部位に静脈瘤ができて治りにくい皮膚炎があれば、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診する必要があります。足首から先のむくみなどもがみられる場合には心臓病や腎臓(じんぞう)病の可能性もあるため、ドプラー血流計や超音波診断装置のある皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは血管外科を受診し、血流不全についてさらに詳しく調べる検査を受ける必要があります。
うっ滞性皮膚炎の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断は、うっ滞性皮膚炎によって出る臨床症状によって行います。皮膚炎が急に悪化する場合には、外用薬や消毒薬による接触皮膚炎の可能性があるので、パッチテストを行います。
治療の基本は、うっ滞性皮膚炎の皮膚が直接刺激や外用薬の影響を比較的受けやすいため、安静を保ち静脈の血行障害を改善させることです。長時間の立ち仕事や歩行は避け、休憩時間や就寝時は下肢を高く挙げて休むようにします。弾性ストッキングや弾性包帯を用いるのも効果的で、弾性ストッキングなどは静脈を圧迫することにより、静脈が伸びたり傷付いたりするのを防ぎます。
皮膚炎に対してはステロイド外用薬を塗ります。抗アレルギー薬なども、かゆみに応じて使用します。
症状が強く大きな静脈瘤があるもの、うっ血が著しくて下肢を高く挙げておいても改善しないもの、慢性の静脈血行不全があるもの、血栓性静脈炎を繰り返すものなどに対しては、表在静脈の皮下抜去(ストリッピング)、流入静脈の高位結紮(けっさつ)、局所の静脈瘤の切除、硬化薬注入、レーザー療法などによる治療などが行われます。
しかしながら、手術や硬化薬注入によって、静脈瘤を切除したりすべて排除しても、この疾患は治りません。治療は主に症状を軽減して外観を改善し、合併症を防ぐために行います。
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