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アキレス腱断裂
かかとの上に位置している大きな腱が切れる外傷
アキレス腱(けん)断裂とは、かかとの上に位置している大きな腱が切れる外傷。中年以降のスポーツ外傷として、比較的多いものとして知られています。
アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋(かたいさんとうきん)の腱部分で、かかとの骨である踵骨(しょうこつ)に付着しており、足首を足底側に曲げる働きをしています。急に駆け出す、ジャンプする、足関節に力を入れて伸ばすなどの際に、アキレス腱に曲がる力が加わると、バシッと音がして叩(たた)かれたような感じがし、断裂することがあります。
断裂すると、つま先を伸ばすことができず、足首が曲がったままの状態になります。足首の後ろで皮膚の上からアキレス腱に触れると、途切れて、くぼんでいるのがわかります。押すと痛みがあり、皮下出血を認めることもあります。ふくらはぎを握っても、足関節が伸びません。
部分断裂の場合は、足関節を伸ばして足底方向に曲げることはできますが、やはりアキレス腱の部分がくぼみ、十分に力が入らず、痛みがあります。
人口10万人に対して5~40人程度の発生率で、近年は増加傾向にあります。特に30~40歳代の男性に多く認められ、原因の80パーセント前後を占めているのはスポーツ外傷です。種目ではバドミントン、バレーボール、サッカー、テニスなどのレクリエーションスポーツが中心となっていて、バトミントンやテニスで前にダッシュした時や、バレーボールでジャンプして着地した時などに受傷します。
スポーツ外傷の場合、ストレッチング、ウォーミングアップの不足が原因と考えられますが、ストレッチを行っていたにもかかわらず断裂することもあり、一般的にアキレス腱断裂の基盤には腱の変性が存在すると考えられています。前兆の全くない人もいますが、断裂する前からアキレス腱に張りや痛みを感じている人も見受けられます。
応急処置として、足関節を曲げず、伸ばしたまま固定し、患部を冷やして、なるべく早く整形外科を受診します。
医師の診断では、特徴的な受傷時のエピソードに加え、くぼみの触知やトンプソンのテストが有用で、ほとんどの症例においてその場で確定が可能です。トンプソンのテストでは、腹ばいになって膝(ひざ)を伸ばして下腿の中央をつかむと、正常では足関節が足底に向かう運動が起こらないことを確かめます。
以上の条件が整えば診断は確定できますが、臨床所見の乏しい例や部分断裂の例では超音波検査やMRI検査を用います。
医師の治療には、アキレス腱をギプスや装具で固定して自然治癒を図る保存療法と、断裂したアキレス腱を縫合する手術療法があります。いずれにおいても、断裂後6カ月の時点での筋力測定の結果に有意差はなく、合併症の発現頻度はほぼ同じと考えられていますが、腱が癒着して歩けるようになるまで2カ月ほどかかります。
スポーツ選手の場合、再断裂の危険が少なく早期復帰が可能だとして、多くが手術療法を選択しています。ただし、感染や皮膚の縫合不全などの合併症が皆無でないため、最近では保存療法にさまざまな工夫を取り入れて、早期復帰を可能にし、スポーツ選手にも適応を広げている医療機関もあります。
予防法としては、スポーツ前にストレッチング、ウォーミングアップを十分に行うことです。特に寒い時期には、念入りに行うことです。
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