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咽頭がん

鼻や口の奥にある咽頭に発生するがん

咽頭(いんとう)がんとは、鼻や口の奥にある咽頭に発生するがん。咽頭は解剖学的には、上(じょう)咽頭、中(ちゅう)咽頭、下(か)咽頭に分類されており、各部位にがんが発生します。

【上咽頭がん】

咽頭は全長約13センチの中空の管で、鼻の後方から始まって、気管、食道の入り口まで連続しています。上(じょう)咽頭がんは、鼻の奥で、口を開けても見えない頭蓋(とうがい)底の直下の部分に発生します。中咽頭がん、下咽頭がんに比べると発生頻度はやや少ない傾向があります。

上咽頭は上気道の一部で、頭蓋底、副鼻腔(びくう)に囲まれ、その下方は中咽頭に続き、その外側は耳管によって両側の中耳腔とつながっています。周辺には内頸(けい)動脈、脳神経が存在します。

初期症状は、がんのために耳管が閉塞(へいそく)されて起こる難聴、鼻詰まり、鼻出血などで、首のリンパ節がしばしば大きくはれてきます。進行すると、脳神経まで侵され、ものが二重に見えたり、三叉(さんさ)神経などの脳神経障害が出てきて、頭痛がしたり、顔面の知覚が鈍くなったり、痛みが出たりします。また、肺、肝臓、骨などへの転位が多いのも、上咽頭がんの特徴です。

【中咽頭がん】

中咽頭がんは、口を開ければ見える扁桃(へんとう)や、その周辺の舌の付け根などに発生するするがん。ほとんどは、中咽頭の表面を覆っている薄く平らな形をした扁平(へんぺい)上皮細胞から発生します。

中咽頭は、口の後方に位置する咽頭の中間部分のことをいいます。空気や食べ物が気管や食道に送られる際には、この中咽頭の中を通過していきます。中咽頭には、これら呼吸作用、嚥下(えんげ)作用のほかに、言葉を作る構音作用があります。

中咽頭がんは、頭頸(けい)部がんの約10パーセントにすぎません。その頭頸部がんの発生頻度は少なく、がん全体の約5パーセントと見なされています。日本では年間1000~2000人程度に、中咽頭がんが発生していると推定されています。男性が女性よりも3~5倍多く発症し、好発年齢は50~60歳代。

中咽頭がんは、咽頭粘膜の扁平上皮細胞が正常の機能を失い、無秩序に増えることにより発生します。近年、がんの発生と遺伝子の異常についての研究が進んでいるものの、なぜ細胞が無秩序に増える悪性の細胞に変わるのか、まだ十分わかっていません。

がんは周囲の組織や器官を破壊して増殖しながら、ほかの臓器に広がり、多くの場合腫瘤(しゅりゅう)を形成します。ほかの臓器にがんが広がることを転移と呼びます。

中咽頭がんの原因として最も因果関係がはっきりしているのは、喫煙習慣と過度の飲酒です。従って、長期の飲酒歴、喫煙歴のある人は注意を要します。

その初期には、自覚症状がほとんどありません。進行すると、扁桃部のはれ、咽頭の異物感、咽頭痛、嚥下痛などの症状で気付きます。さらに、発声障害、出血、呼吸困難、嚥下障害などの深刻な症状が出現してきます。首のリンパ節への転位も比較的多く出現し、のどの症状より先に首のしこりに気付くこともあります。

しかし、がんのできる部位や大きさにより症状が出にくい場合もあり、症状がないからといって安心はできません。

扁平上皮細胞から発生するがんのほか、まれには唾液分泌腺(せん)などの腺組織から生じる腺がん、およびそれに類するがんも発生します。また、この部位には悪性リンパ腫がしばしばみられるが、中咽頭がんとは別に取り扱われます。

【下咽頭がん】

下咽頭がんとは、食道の入り口付近の下咽頭の組織に、がん細胞を認める疾患。食道との移行部に当たる下咽頭のすぐ前には、のど仏の軟骨に囲まれた声帯を含む喉頭(こうとう)があり、表裏一体の関係となっています。すぐ後ろには頸椎(けいつい)骨があり、喉頭と頸椎骨に挟まれた格好になっています。

下咽頭の悪性腫瘍のほとんどは、その下咽頭の粘膜の扁平上皮細胞から発生しています。 そのほかに、腺がん、腺様嚢胞(のうほう)がん、粘表皮がん、未分化がん、小細胞がんなどがありますが、非常にまれ。

原因はわかっていません。喫煙や飲酒と関係があるといわれていて、ヘビースモーカーや大酒飲みほどかかりやすく、男性は女性の4~5倍の頻度で発生しています。長年の慢性刺激が関係していることから、好発年齢は50歳以降であり、60~70歳ころにピークがあります。近年では平均寿命の延びに伴って、80歳以上にもしばしばみられるようになっています。

また、下咽頭がんが発見された人の1~3割には、食道にもがんを認めます。これは転移ではなく、全く別に2カ所以上にがんが発生する重複がんといわれるものです。食道がんの発生も下咽頭がんと同様に、喫煙や飲酒と深い関係があることが原因と考えられています。

下咽頭がんの初期には、軽度の咽頭の痛み、嚥下に際しての痛みや咽頭異物感を自覚する程度です。進行すると、咽頭痛、嚥下痛が強くなり、食べ物が飲み込みにくくなります。咽頭と耳は痛みの神経がつながっているため、耳の奥への鋭い痛みとして感じることもあります。

喉頭までがんが広がると、声がかすれるようになります。 息の通り道が狭くなり、息苦しくなることもあります。

頸部のリンパ節に転移しやすいのも、下咽頭がんの特徴です。転移によるリンパ節のはれのみが、自覚症状であることもあります。初めは痛みもなく徐々に大きくなり、急激に大きくなることもあります。複数個のリンパ節がはれたり、両頸部のリンパ節がはれたりすることも珍しくありません。

咽頭がんの検査と診断と治療

【上咽頭がん】

医師による診断では、内視鏡検査やCT検査、MRI検査などの画像検査を行い、最終的には組織片を調べて確定します。

治療は放射線照射が主体ですが、従来の成績はあまり良好ではありませんでした。近年では、放射線治療の前後に、抗がん剤の注射療法を行い、肺、肝臓などへの転位を防止します。

この化学療法を実施することで、従来は40パーセント以下だった5年生存率は、60パーセントまで向上するようになっています。

【中咽頭がん】

医師による診断では、上咽頭がんと同じく、内視鏡検査やCT検査、MRI検査などの画像検査を行い、最終的には組織片を調べて確定します。

初期のがんでは、放射線治療で十分に治る可能性があります。進行したがんでは、手術が必要になります。

両側の首にリンパ節転移がある場合や、片側でも多数のリンパ節がはれている場合には、肺転移が多いために、手術や放射線治療の前後に抗がん剤による治療が行われます。抗がん剤による治療はある程度の効果は得られるものの、単独でがんを根治するだけの力はないので、現在のところ手術や放射線治療に比べると補助的な治療と位置づけられています。

近年では、放射線治療と抗がん剤の同時併用療法が注目されています。

【下咽頭がん】

下咽頭がんはかなり大きくならないと症状が出ない部位に発生するため、60パーセント以上は初診時に、すでに進行がんの状態です。のどの違和感や異物感、持続性の咽頭痛、食べ物がつかえる感じ、声のかすれなどといった症状が現れた場合には、早めに医療機関を受診します。治療をしなければ、症状の消失をみないのが一般的です。

医師による診断では、間接喉頭鏡や喉頭内視鏡(ファイバースコープ)を使ってのどの奥を観察したり、頸部を丹念に触り、リンパ節転移の有無や、がんの周囲の組織への浸潤の程度を判断します。正常ではない組織を認めた場合には、その組織のごく一部を採取し、顕微鏡下でがんの細胞か否かを観察する生検を行います。

がんの広がりの程度を調べるために、CT、MRI、バリウムなどの画像の検査や、食道方向へのがんの広がりや重複がんの有無を調べるために上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を行ったり、他の臓器への遠隔転移を調べるため、胸部レントゲンやCTなどの検査を行います。また、治療の方法を選択する上で心電図や呼吸機能などの全身状態の検査も行います。

治療においては、放射線治療のみで完治する可能性は極めて低いため、手術を主体とした治療法が一般に行われています。手術を行う場合は、がんに隣接している喉頭も多くは犠牲にしなければなりませんので、手術後、声を失うことが多くなります。腫瘤が小さければ、喉頭を残す手術も可能。

切除した下咽頭部分は、皮膚や胃、腸の一部を用いて再建形成します。通常、小腸の一部の空腸を移植して、新しい食道を作ります。

食生活は手術前と同じですが、声が失われます。喉頭がんの手術よりも、切除される範囲が広いため、食道に飲み込んだ空気を吐き出すことで、手術時に縫合した食道部を振動させる食道音声の習得は、やや難しい面があります。

外科療法を中心に治療を受けた発症者の5年生存率は、全体で40パーセント弱です。

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