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横隔膜ヘルニア
横隔膜に穴が開き、腹部の内臓が胸腔内に入り込んだ状態
横隔膜ヘルニアとは、横隔膜に穴が開き、腹部の内臓が胸腔(きょうくう)内に入り込んだ状態。
横隔膜とは、肺の下に位置して、胸部と腹部を区切る膜です。この筋肉層の丈夫なドーム状の膜が上下することによって呼吸ができますが、完全に区切られているわけではなく、大動脈裂孔、大静脈裂孔、食道裂孔という3つの穴が開いていて、そこがヘルニアを起こしやすい部分となっています。
横隔膜ヘルニアには、外傷によるものと非外傷のものがあり、非外傷のものには、さらに先天性と後天性のものがあります。
外傷性の横隔膜ヘルニアでは、胸部や腹部への外傷で横隔膜が破れ、その裂け目から腹部の臓器が胸腔内に流れ込み、生命を脅かす危険も高くなります。事故などで胸に強い打撲を受けるのが原因となることが多いのですが、強いせきなど、ちょっとしたタイミングで横隔膜が破れることもあります。
症状としては、呼吸困難、ショック症状、吐き気、嘔吐(おうと)などがよくみられます。まれに、外傷を受けてから2~3年後に発症する場合があります。
非外傷性の横隔膜ヘルニアには、ほぼ先天性でしかみられないボックダレック孔ヘルニア、傍胸骨孔ヘルニアの2種と、後からでもなる可能性が高い食道裂孔ヘルニアがあります。
ボックダレック孔ヘルニアは、ほぼ先天性でしか発見されません。しかし時々、生まれた時は何ともなかったのに成長してから強いせきをしたり、胸に打撲を受けたりすると発症することもあります。これを遅発性といいます。
このボックダレック孔ヘルニアは、新生児がすぐに呼吸困難などの症状を呈してしまうと、半数は予後不良を起こすという怖いヘルニアで、新生児2000~3000人に1人の割合で認められます。遅発性であれば、速やかに手当てを受ければほぼ助かります。
胎児が母胎にいる時、次第に横隔膜が形成されてきて、やがてしっかりと横隔膜が胸部と腹部を区切るのですが、何らかの原因で横隔膜がきっちりと閉じ切らないことがあります。こうなるとヘルニアを起こしてしまい、横隔膜が閉じようとしても脱出した臓器がじゃまをして閉じられなくなってしまうのが、ボックダレック孔ヘルニアの原因です。
最大の症状は、呼吸困難が挙げられます。胎児の場合はへその緒から酸素をもらっているので平気なのですが、出産後は自分で呼吸しなければならないため、生まれてすぐに呼吸困難を起こすことが多くなります。また、腹部にうまく空気が回らないので、へこんでいるのも特徴。脱出した臓器によって肺が圧迫されているため、肺の生育不良や疾患を伴っていることもあります。
傍胸骨孔ヘルニアは、本来しっかりと胸骨にくっついているはずの横隔膜のつながりが弱く、ちょっとした弾みでくっつきが外れて、そこに臓器が侵入してくることによって起こるヘルニアです。自覚症状も少なく、発症者本人も気付かないことがあります。ただし自然に治るようなことはなく、まれに呼吸困難などの深刻な症状に発展することがあります。
食道裂孔ヘルニアは、横隔膜ヘルニアの中で最も多く、横隔膜を貫く食道裂孔の一部分に異常が生じ、胃が胸腔内に入り込むヘルニアです。本来、食道と胃の接合する位置は、横隔膜の下になっています。食道裂孔ヘルニアの場合は、食道と胃の接合部を含めて胃の上部が一緒に胸腔へ脱出する滑脱型と、食道と胃の接合部は横隔膜の下にあって胃の一部だけが脱出する傍食道型、および両者が混じった形で脱出する混合型があります。
大部分は滑脱型であり、あまり大きな症状が出ることは少ないのですが、この状態では胃の中のものが食道へと逆流するのを防ぎようがありません。そのため、食道炎を併発することになります。全体の1割程度と数は少ない傍食道型は、胃の一部が食道のわきを通った状態で横隔膜に挟まれるため出血したり、逆に血が巡らなくなったりするなど、滑脱型より重い症状を起こしやすくなります。混合型は、まれにしかみられません。
先天性のものもありますが、大部分は老化、脊椎(せきつい)変形、肥満、便秘、多産などが、食道裂孔ヘルニアの誘因となります。特に、コルセットをしている変形性脊椎症の高齢者に、よく起こります。いずれも、腹腔内の圧である腹圧が上昇し、横隔膜の筋力が低下するのが原因となっています。どちらかというと女性に多く、特に老化によるものであればさらに女性の割合が増えます。
胸焼け、胸骨下の痛み、みぞおちの痛み、吐き気、食べ物のつかえ、貧血などの症状が、数カ月から数年に渡って、よくなったり悪くなったりする状態が続きます。
これらの症状の多くは、同時に併発しやすい逆流性食道炎や、ヘルニア内に生じるびらん性胃炎、胃潰瘍(かいよう)によるもの。そのほか合併しやすい疾患には、瘢痕(はんこん)性食道狭窄(きょうさく)、出血性貧血などがあります。
食道裂孔ヘルニアがあっても、自分では気付かず、胃の検査で偶然発見されることも少なくありません。
横隔膜ヘルニアの検査と診断と治療
横隔膜ヘルニアでは基本的に内科を受診しますが、外傷性の横隔膜ヘルニアでは外科を受診する必要があります。ただし、病院ごとに異なることがあり、特に複数の診療科目を持っている総合病院では、違いが出ると思われます。なお、ヘルニアによる合併症などを治療するため、複数の科目を受診する必要があるケースもあります。
外傷性の横隔膜ヘルニアは、緊急性が高く、すぐにでも適切な治療と手術が必要とされます。手術によって治療できた後で、リハビリテーションや投薬治療が行われます。
先天性でボックダレック孔ヘルニアを持って生まれてくる場合、大抵は胎児が母胎の中にいるうちに医師がこのヘルニアに気付き、早期に帝王切開で出産することになります。成長すればするほど脱出した臓器が胎児の肺を押しつぶし、危険な状態になっていくからで、出生直後から人工呼吸管理を行った上、できるだけ早期に、手術に耐えられるようになった時点で速やかに、生育時に閉じ切れなかった横隔膜を閉じる手術が行われます。しかし、最高の環境で早期に手術が行われても、生存率は芳しくないのが実情です。
傍胸骨孔ヘルニアは、自然に治るようなことはなく、まれに呼吸困難などの深刻な症状に発展することがあるので、見付けた場合は手術が行われます。手術の成功率は高く、比較的治しやすいヘルニアといえるでしょう。
食道裂孔ヘルニアは、軽ければ特に薬による治療の必要はありません。腹部を圧迫しないように帯、ベルトを緩くし、便秘や肥満を治し、脂肪食を制限すれば十分です。逆流性食道炎があれば、H2受容体拮抗(きっこう)薬やプロトンポンプ阻害薬を服用します。
内科的治療でよくならない食道炎や、炎症の跡が引きつれたようになって食道の内腔が狭まる瘢痕性食道狭窄などは、手術が必要となります。
傍食道型食道裂孔ヘルニアの場合も、形態的変化であるため、原則的に手術を行う必要があります。傍食道型では横隔膜が胃を締め付けてしまうため、締め付けられた胃が出血したり、逆に血の巡りが悪くなったりして、滑脱型より危険度が高く、自然治癒が難しい点や合併症を未然に防ぐなどの理由で、手術で治すケースが多くみられます。
脱出している胃を腹腔内に引き戻し、開大している食道裂孔を縫縮し、逆流防止手術を追加します。手術後の治癒率は、良好です。
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