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腸重積(じゅうせき)症とは、上方の腸管が下方の腸管の中に入り込んだ状態。腸閉塞(へいそく)の一種で、腸の内容物が通過できなくなります。
年齢的には、10歳未満の子供、特に1歳以下の乳児に多くみられます。成人の場合には、腸のポリープが先導となって引き込まれるような形で、腸重積を起こします。早く診断して処置をしないと、生命に危険の及ぶ疾患です。
よく起こるのは、小腸の最後の部分である回盲部が上行結腸の中に入り込むケースで、腸管が二重、または三重になることがあります。乳児の小腸と上行結腸は腸間膜による固定が弱くて、動きやすいため、回盲部が上行結腸の中に入り込みやすくなります。下方の小腸の中へ上方の小腸が入り込んだりもします。
いったん上行結腸へ回盲部が入り込んで、その先端に腫瘤(しゅりゅう)のようなものができると、回盲部には大腸から小腸へ内容物が逆流しないように弁があるので、その回盲弁に腫瘤が引っ掛かって抜けなくなります。入り込んだ小腸はどんどん、肛門(こうもん)のほうへ進入していきます。
狭い腸の中に入り込んだ小腸は、上を覆っている大腸によって締め付けられ、血液がうまく流れなくなり、長い時間そのままにしておくと、血液がこない組織は生命力を失う壊死(えし)に至ります。
発症は急で、突然に乳児の顔色が青白くなり、腹痛のために、脚を腹につけるような格好で激しく泣き叫んで、嘔吐(おうと)します。この腹痛の発作は数分で収まりますが、また繰り返します。嘔吐が続くと脱水症状を来し、重なっている部分の腸管が炎症を起こして出血し、粘液の混ざった血液が自然に下血として排出されたり、浣腸(かんちょう)をすると血便が出てきたりします。
腹部を触ると、右上腹部からへその上部あたりに、ソーセージ上の腫瘤を触れることがあります。最悪のケースでは、腸管が破れて腹膜炎を起こし、命にかかわることがあります。
乳児などに腸重積症の症状が重なって現れ、続くようなら、小児科を受診します。夜間なら救急外来を受診します。
医師による診断は、症状、経過のほかに、右上腹部を押すと痛みのある腫瘤を触れること、超音波検査で特徴的な所見を示すこと、肛門からカテーテルを入れて造影剤を注入し、X線撮影する注腸造影などで行います。
発症後12時間以内で全身状態が比較的よい場合は、診断を兼ねて注腸造影を行って、圧力を加えることにより整復を試みます。X線透視下で造影剤、あるいは空気を用いた整復が一般的ですが、現在では超音波下で整復を行う医療機関もあります。整復が成功した場合でも、再発が起こらないかどうか入院して経過を観察します。再発の半数は、初回整復後5日以内にみられます。
発症から長時間経過している場合、腸閉塞が高度である場合、全身状態が著しく悪く注腸造影で整復できない場合、すでに腹膜炎を合併している場合は、開腹手術が必要になります。
なお、乳児が一度、腸重積を起こしたら、腸の固定がよくなる2歳ごろまで、再発に絶えず注意を払う必要があります。
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