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匙状(さじじょう)づめとは、つめの甲の先端、あるいは全体がスプーン状にへこむ状態。スプーンネイルとも呼ばれます。
全指のつめがスプーン状に表面がへこんでいる場合、成人では鉄欠乏性貧血の症状のことがあります。同時に、口角炎、口唇炎、赤い舌がある場合は、さらにその可能性が強いので、内科を受診する必要があります。
鉄欠乏性貧血は、体内の鉄が不足することにより、赤血球の中に含まれているヘモグロビン(血色素)の産生が不十分になって、発症する貧血です。ヘモグロビンは肺から各臓器や組織に酸素を運び、不必要になった二酸化炭素を持ち帰って、肺から外に出すなど重要な働きをしていますので、ヘモグロビンの産生が不足すると、全身に運ばれる酸素の量が減少し、体が酸素不足になって貧血を起こし、めまいや、立ちくらみ、匙状づめの症状が現れたりします。体内には、鉄分がため込まれているため、すぐに鉄分がなくなってしまうということはありませんが、ため込まれている鉄分がなくなった時に症状が現れます。
また、数本のつめだけに、スプーン状に表面がへこんでいる変化がみられる場合は、局所的な原因のことが多く、クリーニング業など、酸やアルカリ、有機溶剤などに長期間、接している人に生じることがあります。
医師による匙状づめの治療では、鉄剤を内服します。この鉄剤には、徐放性鉄剤と非徐放性鉄剤があります。徐放性鉄剤は、胃から腸にかけてゆっくりと鉄を放出して、少しずつ吸収されるため、胃粘膜への刺激は少なく、空腹時に飲むことができます。ただ、この製剤は胃酸がないと効果がないため、胃の切除を受けた人には使えません。非徐放性鉄剤は、胃を切除した人や胃酸の分泌が低下している高齢者、低酸症の人に吸収可能な薬剤です。
徐放性、非徐放性ともに主な副作用として、悪心、嘔吐(おうと)、食欲不振、腹痛、下痢、便秘などの胃腸障害を起こすことがあります。鉄剤を服用すると便が黒くなることがありますが、心配はいりません。貧血が改善されたからといって、医師の指示なしに服用をやめてはいけません。赤血球中のヘモグロビンの量が正常になっても、その後2〜3カ月は服用を継続する必要があります。
匙状づめは、生活習慣の改善によって予防することができます。まず、無理なダイエットや偏食、不規則な食事、夜更かしを改め、鉄分の多い食品を積極的に摂取します。仕事上、どうしても薬品を使用しなければいけないという人にとっても、鉄分を意識的に摂取することはお勧め。また、指を保護するアイテムを使用するのもお勧めです。
成人男性は鉄分を1日約12〜15mg、成人女性は15〜20mgの摂取を心掛けたいもの。女性は月経や妊娠、授乳のため鉄分が失われやすいので、男性より多くを必要とします。鉄分を多く含む食品は、大豆、大豆製品、レバー、ひじき、もずく、のり、あさり、かき、ほうれん草、小松菜、切干大根、いわし丸干し、牛もも肉、まぐろ赤身など。
蛋白(たんぱく)質を摂取することも、大切です。ヘモグロビンは鉄と蛋白質でできているので、肉や魚、豆腐、卵などを適量食べます。また、ビタミンCは鉄の吸収を促進させる働きがあるので、野菜や果物なども食べるようにします。緑茶や紅茶、コーヒーに含まれるタンニンを鉄分と一緒に摂取すると、鉄分の吸収が悪くなりますので、食事とは時間をずらして飲むといいでしょう。
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