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精巣性女性化症候群



男性ホルモンの受け皿が働かないために、外性器が女性化する先天性異常

精巣性女性化症候群とは、男性ホルモンの受け皿が働かないために、男性への性分化に障害が生じる先天性の疾患群。アンドロゲン不応症とも呼ばれます。

男性仮性半陰陽(はんいんよう)の発生の原因となる疾患の1つに数えられます。この精巣性女性化症候群では、染色体による性は46XY型の男性であり、男性の性腺である精巣からテストステロンを主とするアンドロゲン(男性ホルモン)が分泌されています。しかしながら、体の中の細胞の表面にあるアンドロゲン(男性ホルモン)受容体という、ホルモンの受け皿のような構造に遺伝子異常があるために、男性ホルモンの全部または一部を感知できません。その結果、外性器になる組織が男性型へ発達することができなくなります。

そもそも、性分化は性染色体による性に規定されます。具体的にはY染色体の有無が性を決定し、Y染色体上のSRY遺伝子が精巣決定因子として作用します。SRY遺伝子を有する男の胎児では未分化性腺から精巣が分化、発生し、SRY遺伝子を有しない女の胎児では卵巣に分化、発生し、それぞれ配偶子が精子と卵子に分かれていきます。

次いで、男の胎児では胎児期精巣のセルトリ細胞からミュラー管抑制因子、ライディッヒ細胞からアンドロゲンが分泌され、それぞれミュラー管の退縮とウォルフ管の発育が起こって、性器の男性化が起こります。

ところが、精巣性女性化症候群の場合、ミュラー管抑制因子は正常に分泌される一方、アンドロゲンの作用が発現しません。その結果、ミュラー管由来の女性内性器(子宮、卵管、腟〔ちつ〕上3分の1)と、ウォルフ管由来の男性内性器(精巣上体、精管、精嚢〔せいのう〕、射精管)はみられないということになります。

精巣性女性化症候群は、X染色体に依存する伴性遺伝であり、多くは母親が保因者となっています。染色体による性が46XX型の女性であれば、精巣性女性化症候群であっても特に症状はなく、疾患として発見されずに保因者となり、家族性に受け継がれることもあります。

精巣性女性化症候群は、アンドロゲンを全く感知しない完全型精巣性女性化症候群、アンドロゲンを不完全に感知する不完全型精巣性女性化症候群、アンドロゲンの一部を感知しない部分型精巣性女性化症候群の3型に分かれます。

完全型精巣性女性化症候群では、外性器は女性型で、上端がふさがっている腟があり、内性器は精巣を持つ男性型で、子宮、卵巣はありません。その精巣は体内にとどまる停留精巣で、造精機能は著しく低下しています。鼠径(そけい)ヘルニア、尿道下裂の合併が多い傾向も示します。第二次性徴は女性化乳房などがみられる女性型を示しますが、子宮、卵巣を持たないため月経はなく、妊娠、出産は不可能です。乳房はやや未発達で、陰毛、わき毛はありません。

不完全型精巣性女性化症候群では、外性器に軽度の男性化が認められ、陰核肥大、陰唇癒合などの男性化兆候がみられます。部分型精巣性女性化症候群では、外性器が男女中間型を示し、男性器とも女性器とも判別しがたい形になることが多く認められます。外性器の形状により、女児もしくは男児として育てられます。

完全型精巣性女性化症候群では、出生時に発見されることはほとんどないため、通常の女児として育てられ、本人も女性として認識して成長します。外見上は正常な女性で、膣も持ち、性交も可能。思春期になって第二次性徴が起きても初潮がない(原発性無月経)ことから、あるいは結婚後に妊娠しないことから、産婦人科などを受診して発見されるケースが多くみられます。

女性として育てられ、思春期あるいは結婚後に、染色体上は男性であるということが診断され、妊娠、出産は不可能と告げられるので、大きな精神的打撃を受ける恐れが大きく、精神的なケアが重要となります。本人や親、夫のショックを配慮して、医師が診断結果を告げないケースもあるといわれています。

出生時に医師や看護師によって、精巣性女性化症候群が発見することが望ましいのですが、思春期や成人後に発見されることもあるのが実態です。思春期になって女の子のはずなのに初潮(初経)がなかったりした場合には、できるだけ早く小児科、あるいは婦人科、産婦人科、内科、内分泌代謝内科などの専門医の診断を受けるようにします。

精巣性女性化症候群の検査と診断と治療

小児科、婦人科、産婦人科、内科、内分泌代謝内科の医師による精巣性女性化症候群の診断では、染色体分析検査、性ホルモンの測定、アンドロゲン受容体の検査、超音波検査、X線造影検査、CTやMRI検査による内性器の存在確認を行います。

精巣性女性化症候群の治療では、戸籍上の性として育てていく性、生きていく性を決めることが最も大事です。一般的には、染色体や精巣によって将来の性を決めるより、現在の外性器の状態、将来の生活、本人の希望や心理状態をも考慮して、男性か女性かを決めます。完全型精巣性女性化症候群の場合、女性として生きていく人がほとんどとなります。

選択した性に合わせて、女性として生きていく決定をした場合で膣が短く、性交に支障を来すケースでは、腟形成術を行って膣を延長します。男性として生きていく決定をした場合には、陰茎形成術を行います。

体内にとどまる停留精巣はがん化するリスクが高いために早期に摘出手術を行う必要があるといわれていますが、成人前にがん化することは少ないため、現在では第二次性徴が完了した思春期以降に精巣摘出が行われています。思春期前に性腺を除去してしまうと、第二次性徴に必要なホルモン量が自前では不足するためです。

一般の男女でもそうですが、分泌された男性ホルモンの一部は体内で女性ホルモンに変換されて機能しており、完全型精巣性女性化症候群であっても精巣からのホルモン分泌が乳房の発育や女性らしい体形を形作るための重要な供給源となっています。

精巣摘出後は、更年期障害や骨粗鬆(こつそしょう)症を防ぐために、ホルモン補充療法によって女性ホルモンを補充します。ホルモン補充療法は一生涯に渡るため、精巣摘出の判断は慎重にしなければならず、精巣を摘出せず、こまめに検診を受けて経過観察を行う場合もあります。

部分型精巣性女性化症候群の停留精巣はがん化リスクが50パーセントと高いのに対し、完全型精巣性女性化症候群の停留精巣はがん化リスクが2パーセントと高くなく、あえて摘出を必須とするほどではないと見なされています。

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